原題:インフルエンザはどこへ消えた? 2021/22シーズンインフルエンザ流行マップ
チーズどころの騒ぎではない
国立感染症研究所(NIID:National Institute of Infectious Diseases)は、インフルエンザ流行マップというインフルエンザがどれだけ流行しているかを都道府県別に色分けして見た目で流行具合が分かるように発表しています。
この冬、2021/22シーズンのインフルエンザ流行マップも発表されているのですが・・・・・・白い。
新型コロナウイルスは2019年から世界各地に流行しだしましたが、2019/20シーズンのインフルエンザ流行マップ(国立感染症研究所感染症情報センター 2019/2020シーズン)を見てみると、9月中旬ごろから発生、12月下旬から1月下旬にかけて感染者数が増加し、以降収束の傾向を見せています。
一方で、2020/21シーズンのインフルエンザ流行マップ(2020/21シーズン)及び2021/2022シーズンの流行マップ(2021/2022シーズン)を見ると、明らかに白い=過去の患者発生状況を基に設けられた基準値を超えた場合に発せられる注意報や警報が発せられていないことが分かります。それに、2019/20シーズンまでは遅くとも11月からは流行マップが掲載されているのに対し、2020/21及び2021/2022シーズンは1月から。この点でも違いがあります。
累積推計受信者数でいくと2020年第36週~2021年第17週で約1.4万人、前シーズン(2019年~2020年)同時期は728.9万
人、前々シーズン(2018年~2019年)同時期は1,200.5万人なので、文字通り桁違いに少ないのです。
参考:インフル、異例の低水準 2季連続、コロナ対策奏功か―増加の感染症も、専門家警戒:時事ドットコム (jiji.com)
新型コロナウイルスの感染症対策であるマスク・手洗い・3密回避が、そのままほかの上気道感染症を劇的に減らすことに繋がっています。
それにもかかわらず感染者数が増える新型コロナウイルスは、いかに感染力が強いのかということでもありますが。
【2026年4月加筆】
[Updated Spr 2026]
インフルエンザは「消えた」のではなかった——白い流行マップの、その後
2021/22シーズンのインフルエンザ流行マップが、
まるで何も起きていないかのように「白一色」だったことは、
当時多くの人に強い違和感を与えました。
インフルエンザは、毎年必ず冬に流行する「季節の風物詩」のように扱われてきました。
それが突然、ほぼ消滅したように見えた。
この異常事態は、単なる一過性の現象だったのでしょうか。
結論から言えば、
インフルエンザは消えたのではなく、抑え込まれていただけでした。
そして2026年現在、その反動は、はっきりと表面化しています。
コロナ対策が「他の感染症」を消した理由
元記事が指摘している通り、
2020/21・2021/22シーズンにインフルエンザが激減した最大の理由は、
新型コロナウイルス対策そのものです。
- マスク着用の常態化
- 手洗い・消毒の徹底
- 人流の抑制
- 学校・職場での集団行動の変化
インフルエンザは、
飛沫・接触を主な感染経路とする上気道感染症です。
つまり、人と人が接触しなければ、驚くほど広がらない。
一方で、
同じ環境下でも新型コロナウイルスだけは拡大を続けました。
これは、感染力・潜伏期間・無症状感染の多さという点で、
従来のインフルエンザとはまったく異なる性質を持っていたからです。
「流行しなかった」ことの副作用——免疫負債
しかし、感染症が流行しなかったことは、
必ずしも良いことばかりではありませんでした。
2023年以降、専門家の間で繰り返し使われるようになった言葉があります。
**免疫負債(Immunity Debt)**です。
これは、
- 本来なら自然感染や軽症感染で獲得されていた免疫が
- 数年間ほぼ更新されなかった結果
- 社会全体の免疫レベルが下がる
という現象を指します。
特に影響を受けたのが、
- 乳幼児
- 学童期の子ども
- 若年層
でした。
「インフルエンザにかかったことがない世代」が、
複数年分まとめて誕生したのです。
2023年以降、何が起きたのか
2023/24シーズン以降、
日本でも世界でも、インフルエンザは再び流行し始めました。
しかも、その特徴は従来と異なります。
- 流行開始が早い
- 夏場にも散発的に発生
- 複数の型が同時に流行
- 重症化リスクが一部年齢層で上昇
これは、
「いつものインフルエンザが戻った」というより、
ブランクを経て、違う形で再登場したと言った方が近い状況です。
2021/22シーズンの“白いマップ”は、
静寂ではなく、嵐の前の空白だったのかもしれません。
なぜ流行マップは「白く見えた」のか
もう一つ重要なのは、
あの流行マップが「現実そのもの」ではなく、
観測されたデータの可視化にすぎない点です。
- 医療機関の受診行動の変化
- 発熱=即コロナ検査という流れ
- インフル検査自体が行われなかったケース
- 発生しても報告に乗らなかった軽症例
つまり、
流行していなかった
ではなく
流行として「検出されなかった」
側面も否定できません。
数字は常に、
「起きた現象」ではなく
「測定された現象」を示している、という基本が
ここでも当てはまります。
「マスクを外した社会」で起きていること
2026年現在、
マスク着用は個人判断となり、
行動制限もほぼなくなりました。
その結果、
- インフルエンザ
- RSウイルス
- 咽頭結膜熱
- 百日咳
といった感染症が、
同時多発的に流行する年が増えています。
これは、
コロナ前に戻ったのではありません。
コロナを経た後の、別のフェーズに入った
と考える方が現実的です。
インフルエンザは「弱い病気」ではない
インフルエンザはしばしば、
- ただの風邪
- 毎年かかるもの
- 休めば治る
と軽視されがちです。
しかし、
流行がなかった数年間を挟んだことで、
改めて次の事実が浮き彫りになりました。
- 高齢者にとっては致命的になり得る
- 基礎疾患との相互作用
- 医療逼迫の引き金になる
- 社会機能を一気に止める力を持つ
「流行しなかった」ことで、
その存在感が薄れただけで、
危険性が下がったわけではありません。
白いマップが教えてくれたもの
2021/22シーズンの白い流行マップは、
結果として、非常に貴重な教材になりました。
それは、
- 人の行動が感染症をどれほど左右するか
- 社会的対策が、数字をどう変えるか
- データは文脈なしでは読めないこと
- 「異常値」こそが、構造を浮かび上がらせること
を、誰の目にも分かる形で示したからです。
「次に備える」という視点
インフルエンザは、
これからも消えることはありません。
むしろ、
- コロナとの同時流行
- 新型インフルエンザ出現の可能性
- ワクチン接種率の低下
- 個人判断に委ねられた感染対策
といった要因により、
不確実性は以前より高まっています。
だからこそ、
白いマップを「過去の珍事」として忘れるのではなく、
「何が起きれば、何が変わるのか」を学ぶ材料として
記憶しておく意味があります。
インフルエンザは、どこへ消えたのか
答えは、
どこへも消えていなかった。
私たちの行動の変化によって、
一時的に姿を潜めていただけです。
そして今、
その空白期間を経た世界で、
インフルエンザは再び「別の顔」で存在感を示しています。
白い流行マップは、
終わりではなく、
次の章の始まりだったのです。

マスクをするのが当たり前になってから喉を傷めることがなくなってます。
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