結論:実質賃金はなぜ4年連続でマイナスなのか
ポイント要約
・厚労省「毎月勤労統計」速報によれば、2025年の実質賃金は前年比▲1.3%で4年連続マイナス。名目賃金は+2.3%だが、CPI(持家の帰属家賃除く)+3.7%が上回った。
・12月単月は実質▲0.1%までマイナス幅が縮小し、名目+2.4%
・物価+2.4%(同指標)と拮抗。年間では依然マイナスが続いた。
・所定内(基本給)や特別給与(賞与)は増加も、物価高と税・社保の負担で「手取り実感」は弱い。先行きは“物価鈍化×賃上げ継続”が整えば反転可能性。「名目は+、実質は-」が同時に起きるメカニズム
名目賃金(現金給与総額)は25年平均で35万5,919円、前年比+2.3%。一方、実質賃金はCPIで割り引くため、物価上昇率(+3.7%)が賃上げを上回れば実質はマイナスになる。いつ反転しうる?転正の3条件(賃上げ・CPI・為替)
①春闘モメンタムが維持され所定内給与が継続的に+2~3%台、
②エネルギー等の政策効果や価格転嫁一巡でCPIが鈍化、
③輸入物価に効く為替が安定――これらが重なれば、月次でプラス定着の可能性が高い。基礎整理:名目賃金・実質賃金・CPIの関係
用語の違いと家計への効き方
名目賃金は支給額の伸び、実質賃金は物価変動を控除した購買力の変化を示す。CPIの上昇が名目賃金を上回ると、家計の体感(可処分のゆとり)は悪化しやすい。25年平均:名目+2.3% vs 実質▲1.3%の意味
25年の名目+2.3%(月35万5,919円)に対し、CPI+3.7%が上回り、実質は▲1.3%。「賃上げの見出し」と「暮らしの実感」にズレが生じるのはこの構図による。「手取り」を削る見えない要因(税・社会保険料・物価構成)
実質賃金はCPIで見た購買力だが、可処分所得はここから税・社保を差し引いた“手取り”。物価高が生活必需の比重で強いと実感はさらに厳しくなる。定義と統計の見方は厚労省公表の各結果で確認できる。家計インパクト:どれくらい「使えるお金」が減ったか
主要費目別に見る負担感(食料・エネルギー・住居・教育)
物価は総合で上がるが、家計は食料やエネルギーの比率が高いほどインパクトが大きい。25年はCPI上昇が賃上げを上回ったため、実質賃金は年間でマイナス。可処分所得の“体感”が悪化する理由
賞与や所定外で年末に押し上げが入っても、月々の所定内給与の実質伸びが弱いと日々の家計の“楽さ”は出にくい。12月はマイナス幅が▲0.1%まで縮小したが、年間トレンドはなおマイナスだった。今後6~12か月のシナリオ(ベース/楽観/慎重)
ベース:賃上げ2%台維持+CPI漸減で月次は小幅プラス化→年後半に定着期待。楽観:春闘強含み+エネルギー低下でCPI2%割れ、実質プラス定着。慎重:為替・輸入物価の再上振れでCPI粘着、実質マイナス長期化。働き手・雇用への影響:正規・非正規・パートで何が違うか
所定内・所定外・特別給与(賞与)の動き方
25年は所定内給与+2.0%、特別給与+3.8%など、構成別に増加。単月12月は特別給与+2.6%が持ち直し、名目賃金は+2.4%へ。フルタイムとパートタイムの賃金動向
一般労働者(フルタイム)の所定内は+2.5%と伸び、パート時給は1,394円で過去最高と報じられた。春闘・ベアの波及と“実感値”のギャップ
春闘の高い賃上げ回答が名目を押し上げる一方、物価が高止まりすると“実感改善”は遅れる。26年は「賃上げの継続×物価鈍化」でギャップ縮小の公算。中小企業・地方製造への波及
価格転嫁の壁:原材料高・円安・電力コストの三重苦
名目賃金の上昇が続く中、エネルギー・資材コストや為替に左右される中小は価格転嫁の遅れが収益を圧迫。賃上げと利益確保の両立には原価・単価の再設計が必須。最新統計でも賃金上昇と物価のせめぎ合いが示された。「賃上げ×採用難」でも潰れない管理(粗利・人件費・在庫・与信)
具体策:①標準原価の四半期改定、②見積に為替・電力の自動スライド条項、
③在庫回転のKPI化、
④支払サイト短縮交渉、
⑤人件費は生産性KPI連動のメリハリ賃金へ――賃上げの“持続可能性”を最優先に。
地方の中小サッシ製造は仕事が減る?チェックリストと対策
チェック:新築着工見通し/主要客先の在庫水準/アルミ・樹脂の仕入れ先通貨構成/電力契約(市場連動)/見積の価格転嫁率。対策:仕様代替提案の標準化・短納期小ロットの差別化・R&M(改修)需要の開拓などで受注の谷を埋める。投資・相場との関係:株高・円安・物価の同時進行をどう読むか
株高なのに生活が楽にならない理由
企業収益や市場は名目ベースで押し上がっても、家計の実質はCPIに影響される。25年は実質▲1.3%が示す通り、賃上げ>物価の状態にならない限り実感は改善しにくい。インフレ耐性のあるポートフォリオの考え方(長期・分散・通貨)
実質の下押し局面では、キャッシュフロー資産や分散・通貨ヘッジで“購買力”を守る設計が基本。先行き実質の反転が見込まれる局面でも、逆回転(円高・物価鈍化)への耐性が鍵。「実質賃金反転」前後のリスク管理(換金需要・逆回転)
実質がプラスに転じる局面は家計の換金需要も高まりやすい。金利・為替・物価の組み合わせが変わると、株・債・REITの相関が崩れるため、バランスの見直しを定期化。政策・制度の論点(超要約)
消費税・給付付き税額控除・社会保険料:家計に効くのはどれか
物価上昇局面では、定額給付や逆進性緩和(給付付き税額控除等)は即効性が高い一方、恒常的な手取り改善は賃上げと社保見直しの組み合わせが要。統計面では、実質賃金はCPIの動向に強く左右される。金融政策・為替・物価:生活との接点をわかりやすく
名目賃金が底堅く、CPIが鈍化すれば実質は改善。伊藤忠総研は、26年央にかけ物価鈍化が進み、実質賃金のプラス圏定着を展望。企業向け支援(補助金・税制)の見つけ方と使いどころ
省エネ・生産性・賃上げ促進型の支援はコスト構造の恒久改善に直結。賃上げ税制や設備補助は“原価・単価・人件費”の同時最適に組み込む。最新の賃金・物価の指標と併せて意思決定の前提を更新する。今日からできる対策:家計と事業のチェックリスト
家計5選:固定費・光熱費・保険・ポイント還元・副収入
①通信・サブスクの統合、②電力プラン見直し、
③保険の過不足是正、
④決済還元最大化、
⑤スキル副業と資格の“実収入”換算――名目アップに頼らず実質を守る。物価・賃金の最新データは定点観測。
中小企業5選:原価設計・価格表再設計・在庫回転・為替前提・調達見直し
①標準原価の短期改定、②価格表を“コストスライド条項”付きに刷新、
③在庫KPIでキャッシュ拘束を削減、
④受発注は前提為替レートを明記、
⑤複線調達と共同購買で仕入コストを平準化。情報の追い方:指標日程・注目リリース・注意ワード
厚労省「毎月勤労統計」の月次・年次、CPI、実質賃金の単月転正、所定内給与の基調、ボーナス動向を継続確認。12月の“マイナス幅縮小”のような変化点は家計にも事業にもヒントとなる。まとめ:データに振り回されず、実務で“可処分”を守る
「名目↑×物価↑」の時代に最適解を更新し続ける
25年は「名目+2.3%/実質▲1.3%」。数字の読み方を誤らず、家計・事業の“実質”を底上げする仕組みを回す。次の好材料/悪材料が出たときの行動フロー
好材料(CPI鈍化・賃上げ加速):投資・人件費計画を前倒し。悪材料(円安再加速・資源高):価格表の再改定、在庫と為替のヘッジ強化。月次データで“転機”を見逃さない。

written by 仮面サラリーマン