2026年2月12日木曜日

国の借金1342兆円は危ないの?今さら聞けない仕組みと家計への影響をわかりやすく解説


1. まず「1342兆円」の正体:何を合算し、なぜ過去最大になったのか

・「国の借金」=国債+借入金+政府短期証券(一般に政府債務)

財務省が公表する「国の借金」は、以下の3つの合計です。

  • 国債(普通国債・財投債など)
  • 政府の借入金
  • 政府短期証券(いわゆるT-Bill)

2025年末時点の見込みは1,342兆1720億円
これは主に「普通国債」が占めており、財政支出を国債発行で補う構造が続いています。

・増加要因:物価高対応などの歳出圧力と国債依存の継続

ここ数年、以下の理由で歳出が増加しています。

  • エネルギー価格変動対策
  • 生活支援・給付措置
  • 高齢化に伴う社会保障費の増加
  • インフラ・防災関連支出

税収だけでは賄いきれず、国債発行増加 → 債務残高の積み上がりとなっています。

・内訳の要点:普通国債・借換債・利払い費・償還ルールの基礎

  • 借換債は満期償還のための“借り換え”。
  • 利払い費は金利上昇により増加傾向。
  • 日本は「60年償還ルール」により、国債を長期で返済していく仕組み。

2. 用語の誤解を30秒で解消:「国の借金」vs「政府の借金」論

・誰から借りているのか:国内投資家、銀行・生保、日銀、海外の比率

日本国債の保有者は主に以下。

  • 国内銀行・生保など金融機関
  • 日本銀行(保有比率は増加傾向)
  • 一般の個人・企業
  • 海外投資家(比率は徐々に上昇)

誰に返す必要があるのかが議論になるため、「国民の資産」「政府の負債」といった言葉が入り乱れます。

・“自国通貨建てなら破綻しない”論で見落とされがちなリスク

理屈としては、自国通貨建てであれば返済不履行(デフォルト)リスクは限定されます。
しかし、以下のリスクは残ります。

  • インフレ進行で通貨価値が下がり、国民生活がダメージを受ける
  • 長期金利上昇で利払い費が増加し、財政を圧迫
  • 市場の信認低下 → 国債価格下落 → 金利急騰

つまり「返せるか」より「国民生活にどんな負荷が生じるか」が論点になります。

・PB、債務対GDP比、格付け、CDS──最低限ここだけは押さえる

  • PB(基礎的財政収支):税収・社会保険料などから国債費を除いて収支を計算する指標
  • 債務対GDP比:国の生産力と負債のバランス
  • 格付け:国債の信用度の評価(市場金利に影響)
  • CDS:デフォルト保険の価格。信用不安の“匂い”を示す

3. 対立する2つの見方:積極財政(MMT含む)vs 財政規律派

・積極財政の主張

  • 経済成長には公共投資・減税が必要
  • 需要不足の時は国が支出し民間活動を押し上げるべき
  • デフレ圧力が強い国では国債発行は問題になりにくい

・規律派の主張

  • 国債残高の増加は金利上昇圧力となり利払い費が膨張
  • 通貨安に直結 → 輸入物価上昇 → 実質賃金が押し下げられる
  • 国債市場の信認低下は長期金利の“急騰”として現れる可能性

・「インフレで返す」は万能か

インフレで債務の実質価値を減らせるという考えもありますが、

  • 生活必需品の価格上昇
  • 預貯金の実質価値目減り
  • 固定所得層の生活圧迫

が生じるため、国民生活の観点では“負担転嫁”につながります。


4. 金利・円相場・物価の波及経路を見取り図で把握する

・長期金利の趨勢とメカニズム

長期金利は主に以下で動きます。

  • 市場の需給(国債の買い手が減れば上昇)
  • 期待インフレ率
  • 日銀の政策スタンス

金利上昇 → 利払い費増 → 財政負担増 → さらなる市場不安という連鎖にも注意。

・円安の持続条件

  • 国債増発のペースが経済成長率を上回る
  • 経常収支が悪化
  • 他国の金利上昇で日米金利差が拡大
  • 日本への投資魅力度低下

円安は輸入価格を押し上げ、インフレを誘発します。

・コストプッシュ vs ディマンドプル

現在の日本は

  • エネルギー・原材料価格の上昇
  • 円安

によるコストプッシュ型インフレが中心。
需要が強くて物価が上がる健全なインフレとは異なります。


5. 家計・投資・企業に何が起こるか(実務編)

・家計:住宅ローン(固定/変動)、生活防衛

  • 金利上昇局面では固定金利の方がリスクは限定的
  • 生活費の上昇を想定した家計の見直し
  • インフレ耐久性のある資産(現金比率の見直しなど)

・投資:国内債券/株式、外貨・インフレ資産

  • 資産全体の一部を外貨ベースに分散
  • 物価連動債、コモディティ、世界株などの検討
  • 日本国債だけに偏らない資産構成

・企業:資金繰り・価格転嫁・為替ヘッジ

  • 金利上昇時の資金コストを早期把握
  • 原材料高を踏まえた価格転嫁の体制整備
  • 外貨建て取引の多い企業は為替ヘッジ強化

6. 国際比較で見える「違い」:米・欧・スイス・韓国と日本の現在地

・政府債務対GDP比・人口動態

日本:約250%前後で世界最高水準
スイス:30%台
米国:100%台
韓国:50%前後

人口構造(高齢化)も債務持続性に影響します。

・中央銀行のスタンス

多くの国が利上げ・QTに転じた一方、日本は金融緩和を長期に継続。
これが金利差→円安の一因となっています。

・“日本だけの特殊事情”

  • 国内投資家による国債保有が多い
  • デフレ期間が極めて長かった
  • 日銀BSに国債が大量に積み上がっている

これらが、他国と同じように比較が難しい要素です。


7. 3つのシナリオ:金利・為替・物価の組合せで“次”を読む

・ベースケース:緩やかな金利上昇+インフレ定着

  • 長期金利はじわじわ上昇
  • 物価は基調的に上昇(2~3%台)
  • 家計の負担感が継続

・上振れリスク:市場の不安→金利急騰

  • 格付けや海外投資家の動向悪化
  • 国債価格が売られ、金利が急上昇
  • 利払い負担が急増し、財政余力が縮小

・下振れリスク:景気後退→税収減

  • インフレ後に景気が弱くなる
  • 税収が鈍化し、債務比率悪化
  • 金融政策の余地も限られる

8. 政策オプションの整理:持続可能性を高める“現実解”

・歳出:選択と集中

  • 成長力を高める投資
  • 人への投資(教育、スキル)
  • インフラ・防災の優先順位付け

・歳入:税体系のバランス

  • 世代間の公平性
  • 働き方の変化に対応した課税
  • 負担と受益の関係の透明化

・債務管理:国債の年限構成・市場の安定

  • 長期化と短期化のバランス
  • 国債市場の流動性確保
  • 日銀BSの正常化と国債買い入れの減速

9. よくある誤解Q\&A

Q1. 「国債は国内保有だから絶対安全」?

→国内保有が多いことは安定材料だが、市場の需給や金利は変動するため、絶対ではない。

Q2. 「インフレになれば借金は目減りする」?

→債務は軽くなるが、国民の預金・実質賃金が目減りするという副作用がある。

Q3. 「国の資産と相殺すれば問題ない」?

→国有資産の多くはインフラなど売却困難なもの。
また“売る=国の機能が弱まる”ため、単純比較はできない。

Q4. 「一人当たりの借金」って意味あるの?

→誤解を招きやすい指標。
本質は政府の収支構造と債務持続性


10. まとめ:数字と機動力で“日本版の最適解”を見つけよう

・短期:金利・為替・物価の三角バランスを注視

長期金利のトレンド転換は最重要。

・中期:供給力・生産性・人口政策が最大のカギ

日本はデフレ期とは異なる局面に入っており、成長力を高める政策が不可欠。

・家計・企業は“今できる対策”を前倒しで

  • 家計:金利・物価への備え
  • 投資:外貨分散・インフレ耐性
  • 企業:金利上昇・為替変動に備える体制構築


written by 仮面サラリーマン