2026年2月13日金曜日

実質賃金4年連続マイナスの真実:名目+2.3%でも暮らしが苦しくなる“本当の理由”と2026年に起きる3つの変化

結論:実質賃金はなぜ4年連続でマイナスなのか

ポイント要約

・厚労省「毎月勤労統計」速報によれば、2025年の実質賃金は前年比▲1.3%で4年連続マイナス。名目賃金は+2.3%だが、CPI(持家の帰属家賃除く)+3.7%が上回った。
・12月単月は実質▲0.1%までマイナス幅が縮小し、名目+2.4%
・物価+2.4%(同指標)と拮抗。年間では依然マイナスが続いた。
・所定内(基本給)や特別給与(賞与)は増加も、物価高と税・社保の負担で「手取り実感」は弱い。先行きは“物価鈍化×賃上げ継続”が整えば反転可能性。

「名目は+、実質は-」が同時に起きるメカニズム

名目賃金(現金給与総額)は25年平均で35万5,919円、前年比+2.3%。一方、実質賃金はCPIで割り引くため、物価上昇率(+3.7%)が賃上げを上回れば実質はマイナスになる。

いつ反転しうる?転正の3条件(賃上げ・CPI・為替)

①春闘モメンタムが維持され所定内給与が継続的に+2~3%台、
②エネルギー等の政策効果や価格転嫁一巡でCPIが鈍化、
③輸入物価に効く為替が安定――これらが重なれば、月次でプラス定着の可能性が高い。

基礎整理:名目賃金・実質賃金・CPIの関係

用語の違いと家計への効き方

名目賃金は支給額の伸び、実質賃金は物価変動を控除した購買力の変化を示す。CPIの上昇が名目賃金を上回ると、家計の体感(可処分のゆとり)は悪化しやすい。

25年平均:名目+2.3% vs 実質▲1.3%の意味

25年の名目+2.3%(月35万5,919円)に対し、CPI+3.7%が上回り、実質は▲1.3%。「賃上げの見出し」と「暮らしの実感」にズレが生じるのはこの構図による。

「手取り」を削る見えない要因(税・社会保険料・物価構成)

実質賃金はCPIで見た購買力だが、可処分所得はここから税・社保を差し引いた“手取り”。物価高が生活必需の比重で強いと実感はさらに厳しくなる。定義と統計の見方は厚労省公表の各結果で確認できる。

家計インパクト:どれくらい「使えるお金」が減ったか

主要費目別に見る負担感(食料・エネルギー・住居・教育)

物価は総合で上がるが、家計は食料やエネルギーの比率が高いほどインパクトが大きい。25年はCPI上昇が賃上げを上回ったため、実質賃金は年間でマイナス。

可処分所得の“体感”が悪化する理由

賞与や所定外で年末に押し上げが入っても、月々の所定内給与の実質伸びが弱いと日々の家計の“楽さ”は出にくい。12月はマイナス幅が▲0.1%まで縮小したが、年間トレンドはなおマイナスだった。

今後6~12か月のシナリオ(ベース/楽観/慎重)

ベース:賃上げ2%台維持+CPI漸減で月次は小幅プラス化→年後半に定着期待。楽観:春闘強含み+エネルギー低下でCPI2%割れ、実質プラス定着。慎重:為替・輸入物価の再上振れでCPI粘着、実質マイナス長期化。

働き手・雇用への影響:正規・非正規・パートで何が違うか

所定内・所定外・特別給与(賞与)の動き方

25年は所定内給与+2.0%、特別給与+3.8%など、構成別に増加。単月12月は特別給与+2.6%が持ち直し、名目賃金は+2.4%へ。

フルタイムとパートタイムの賃金動向

一般労働者(フルタイム)の所定内は+2.5%と伸び、パート時給は1,394円で過去最高と報じられた。

春闘・ベアの波及と“実感値”のギャップ

春闘の高い賃上げ回答が名目を押し上げる一方、物価が高止まりすると“実感改善”は遅れる。26年は「賃上げの継続×物価鈍化」でギャップ縮小の公算。

中小企業・地方製造への波及

価格転嫁の壁:原材料高・円安・電力コストの三重苦

名目賃金の上昇が続く中、エネルギー・資材コストや為替に左右される中小は価格転嫁の遅れが収益を圧迫。賃上げと利益確保の両立には原価・単価の再設計が必須。最新統計でも賃金上昇と物価のせめぎ合いが示された。

「賃上げ×採用難」でも潰れない管理(粗利・人件費・在庫・与信)

具体策:
①標準原価の四半期改定、
②見積に為替・電力の自動スライド条項、
③在庫回転のKPI化、
④支払サイト短縮交渉、
⑤人件費は生産性KPI連動のメリハリ賃金へ――賃上げの“持続可能性”を最優先に。

地方の中小サッシ製造は仕事が減る?チェックリストと対策

チェック:新築着工見通し/主要客先の在庫水準/アルミ・樹脂の仕入れ先通貨構成/電力契約(市場連動)/見積の価格転嫁率。対策:仕様代替提案の標準化・短納期小ロットの差別化・R&M(改修)需要の開拓などで受注の谷を埋める。

投資・相場との関係:株高・円安・物価の同時進行をどう読むか

株高なのに生活が楽にならない理由

企業収益や市場は名目ベースで押し上がっても、家計の実質はCPIに影響される。25年は実質▲1.3%が示す通り、賃上げ>物価の状態にならない限り実感は改善しにくい。

インフレ耐性のあるポートフォリオの考え方(長期・分散・通貨)

実質の下押し局面では、キャッシュフロー資産や分散・通貨ヘッジで“購買力”を守る設計が基本。先行き実質の反転が見込まれる局面でも、逆回転(円高・物価鈍化)への耐性が鍵。

「実質賃金反転」前後のリスク管理(換金需要・逆回転)

実質がプラスに転じる局面は家計の換金需要も高まりやすい。金利・為替・物価の組み合わせが変わると、株・債・REITの相関が崩れるため、バランスの見直しを定期化。

政策・制度の論点(超要約)

消費税・給付付き税額控除・社会保険料:家計に効くのはどれか

物価上昇局面では、定額給付や逆進性緩和(給付付き税額控除等)は即効性が高い一方、恒常的な手取り改善は賃上げと社保見直しの組み合わせが要。統計面では、実質賃金はCPIの動向に強く左右される。

金融政策・為替・物価:生活との接点をわかりやすく

名目賃金が底堅く、CPIが鈍化すれば実質は改善。伊藤忠総研は、26年央にかけ物価鈍化が進み、実質賃金のプラス圏定着を展望。

企業向け支援(補助金・税制)の見つけ方と使いどころ

省エネ・生産性・賃上げ促進型の支援はコスト構造の恒久改善に直結。賃上げ税制や設備補助は“原価・単価・人件費”の同時最適に組み込む。最新の賃金・物価の指標と併せて意思決定の前提を更新する。

今日からできる対策:家計と事業のチェックリスト

家計5選:固定費・光熱費・保険・ポイント還元・副収入

①通信・サブスクの統合、
②電力プラン見直し、
③保険の過不足是正、
④決済還元最大化、
⑤スキル副業と資格の“実収入”換算――名目アップに頼らず実質を守る。物価・賃金の最新データは定点観測。

中小企業5選:原価設計・価格表再設計・在庫回転・為替前提・調達見直し

①標準原価の短期改定、
②価格表を“コストスライド条項”付きに刷新、
③在庫KPIでキャッシュ拘束を削減、
④受発注は前提為替レートを明記、
⑤複線調達と共同購買で仕入コストを平準化。

情報の追い方:指標日程・注目リリース・注意ワード

厚労省「毎月勤労統計」の月次・年次、CPI、実質賃金の単月転正、所定内給与の基調、ボーナス動向を継続確認。12月の“マイナス幅縮小”のような変化点は家計にも事業にもヒントとなる。

まとめ:データに振り回されず、実務で“可処分”を守る

「名目↑×物価↑」の時代に最適解を更新し続ける

25年は「名目+2.3%/実質▲1.3%」。数字の読み方を誤らず、家計・事業の“実質”を底上げする仕組みを回す。

次の好材料/悪材料が出たときの行動フロー

好材料(CPI鈍化・賃上げ加速):投資・人件費計画を前倒し。悪材料(円安再加速・資源高):価格表の再改定、在庫と為替のヘッジ強化。月次データで“転機”を見逃さない。


written by 仮面サラリーマン

2026年2月12日木曜日

国の借金1342兆円は危ないの?今さら聞けない仕組みと家計への影響をわかりやすく解説


1. まず「1342兆円」の正体:何を合算し、なぜ過去最大になったのか

・「国の借金」=国債+借入金+政府短期証券(一般に政府債務)

財務省が公表する「国の借金」は、以下の3つの合計です。

  • 国債(普通国債・財投債など)
  • 政府の借入金
  • 政府短期証券(いわゆるT-Bill)

2025年末時点の見込みは1,342兆1720億円
これは主に「普通国債」が占めており、財政支出を国債発行で補う構造が続いています。

・増加要因:物価高対応などの歳出圧力と国債依存の継続

ここ数年、以下の理由で歳出が増加しています。

  • エネルギー価格変動対策
  • 生活支援・給付措置
  • 高齢化に伴う社会保障費の増加
  • インフラ・防災関連支出

税収だけでは賄いきれず、国債発行増加 → 債務残高の積み上がりとなっています。

・内訳の要点:普通国債・借換債・利払い費・償還ルールの基礎

  • 借換債は満期償還のための“借り換え”。
  • 利払い費は金利上昇により増加傾向。
  • 日本は「60年償還ルール」により、国債を長期で返済していく仕組み。

2. 用語の誤解を30秒で解消:「国の借金」vs「政府の借金」論

・誰から借りているのか:国内投資家、銀行・生保、日銀、海外の比率

日本国債の保有者は主に以下。

  • 国内銀行・生保など金融機関
  • 日本銀行(保有比率は増加傾向)
  • 一般の個人・企業
  • 海外投資家(比率は徐々に上昇)

誰に返す必要があるのかが議論になるため、「国民の資産」「政府の負債」といった言葉が入り乱れます。

・“自国通貨建てなら破綻しない”論で見落とされがちなリスク

理屈としては、自国通貨建てであれば返済不履行(デフォルト)リスクは限定されます。
しかし、以下のリスクは残ります。

  • インフレ進行で通貨価値が下がり、国民生活がダメージを受ける
  • 長期金利上昇で利払い費が増加し、財政を圧迫
  • 市場の信認低下 → 国債価格下落 → 金利急騰

つまり「返せるか」より「国民生活にどんな負荷が生じるか」が論点になります。

・PB、債務対GDP比、格付け、CDS──最低限ここだけは押さえる

  • PB(基礎的財政収支):税収・社会保険料などから国債費を除いて収支を計算する指標
  • 債務対GDP比:国の生産力と負債のバランス
  • 格付け:国債の信用度の評価(市場金利に影響)
  • CDS:デフォルト保険の価格。信用不安の“匂い”を示す

3. 対立する2つの見方:積極財政(MMT含む)vs 財政規律派

・積極財政の主張

  • 経済成長には公共投資・減税が必要
  • 需要不足の時は国が支出し民間活動を押し上げるべき
  • デフレ圧力が強い国では国債発行は問題になりにくい

・規律派の主張

  • 国債残高の増加は金利上昇圧力となり利払い費が膨張
  • 通貨安に直結 → 輸入物価上昇 → 実質賃金が押し下げられる
  • 国債市場の信認低下は長期金利の“急騰”として現れる可能性

・「インフレで返す」は万能か

インフレで債務の実質価値を減らせるという考えもありますが、

  • 生活必需品の価格上昇
  • 預貯金の実質価値目減り
  • 固定所得層の生活圧迫

が生じるため、国民生活の観点では“負担転嫁”につながります。


4. 金利・円相場・物価の波及経路を見取り図で把握する

・長期金利の趨勢とメカニズム

長期金利は主に以下で動きます。

  • 市場の需給(国債の買い手が減れば上昇)
  • 期待インフレ率
  • 日銀の政策スタンス

金利上昇 → 利払い費増 → 財政負担増 → さらなる市場不安という連鎖にも注意。

・円安の持続条件

  • 国債増発のペースが経済成長率を上回る
  • 経常収支が悪化
  • 他国の金利上昇で日米金利差が拡大
  • 日本への投資魅力度低下

円安は輸入価格を押し上げ、インフレを誘発します。

・コストプッシュ vs ディマンドプル

現在の日本は

  • エネルギー・原材料価格の上昇
  • 円安

によるコストプッシュ型インフレが中心。
需要が強くて物価が上がる健全なインフレとは異なります。


5. 家計・投資・企業に何が起こるか(実務編)

・家計:住宅ローン(固定/変動)、生活防衛

  • 金利上昇局面では固定金利の方がリスクは限定的
  • 生活費の上昇を想定した家計の見直し
  • インフレ耐久性のある資産(現金比率の見直しなど)

・投資:国内債券/株式、外貨・インフレ資産

  • 資産全体の一部を外貨ベースに分散
  • 物価連動債、コモディティ、世界株などの検討
  • 日本国債だけに偏らない資産構成

・企業:資金繰り・価格転嫁・為替ヘッジ

  • 金利上昇時の資金コストを早期把握
  • 原材料高を踏まえた価格転嫁の体制整備
  • 外貨建て取引の多い企業は為替ヘッジ強化

6. 国際比較で見える「違い」:米・欧・スイス・韓国と日本の現在地

・政府債務対GDP比・人口動態

日本:約250%前後で世界最高水準
スイス:30%台
米国:100%台
韓国:50%前後

人口構造(高齢化)も債務持続性に影響します。

・中央銀行のスタンス

多くの国が利上げ・QTに転じた一方、日本は金融緩和を長期に継続。
これが金利差→円安の一因となっています。

・“日本だけの特殊事情”

  • 国内投資家による国債保有が多い
  • デフレ期間が極めて長かった
  • 日銀BSに国債が大量に積み上がっている

これらが、他国と同じように比較が難しい要素です。


7. 3つのシナリオ:金利・為替・物価の組合せで“次”を読む

・ベースケース:緩やかな金利上昇+インフレ定着

  • 長期金利はじわじわ上昇
  • 物価は基調的に上昇(2~3%台)
  • 家計の負担感が継続

・上振れリスク:市場の不安→金利急騰

  • 格付けや海外投資家の動向悪化
  • 国債価格が売られ、金利が急上昇
  • 利払い負担が急増し、財政余力が縮小

・下振れリスク:景気後退→税収減

  • インフレ後に景気が弱くなる
  • 税収が鈍化し、債務比率悪化
  • 金融政策の余地も限られる

8. 政策オプションの整理:持続可能性を高める“現実解”

・歳出:選択と集中

  • 成長力を高める投資
  • 人への投資(教育、スキル)
  • インフラ・防災の優先順位付け

・歳入:税体系のバランス

  • 世代間の公平性
  • 働き方の変化に対応した課税
  • 負担と受益の関係の透明化

・債務管理:国債の年限構成・市場の安定

  • 長期化と短期化のバランス
  • 国債市場の流動性確保
  • 日銀BSの正常化と国債買い入れの減速

9. よくある誤解Q\&A

Q1. 「国債は国内保有だから絶対安全」?

→国内保有が多いことは安定材料だが、市場の需給や金利は変動するため、絶対ではない。

Q2. 「インフレになれば借金は目減りする」?

→債務は軽くなるが、国民の預金・実質賃金が目減りするという副作用がある。

Q3. 「国の資産と相殺すれば問題ない」?

→国有資産の多くはインフラなど売却困難なもの。
また“売る=国の機能が弱まる”ため、単純比較はできない。

Q4. 「一人当たりの借金」って意味あるの?

→誤解を招きやすい指標。
本質は政府の収支構造と債務持続性


10. まとめ:数字と機動力で“日本版の最適解”を見つけよう

・短期:金利・為替・物価の三角バランスを注視

長期金利のトレンド転換は最重要。

・中期:供給力・生産性・人口政策が最大のカギ

日本はデフレ期とは異なる局面に入っており、成長力を高める政策が不可欠。

・家計・企業は“今できる対策”を前倒しで

  • 家計:金利・物価への備え
  • 投資:外貨分散・インフレ耐性
  • 企業:金利上昇・為替変動に備える体制構築


written by 仮面サラリーマン