2022年4月18日月曜日

どん兵衛 東日本版 vs 西日本版 味の境界線はどこだ?



以前に書きましたが、過去に別個所で書いていたブログを消去する作業を行っています。

ただ、「これは残しておきたいよね」という内容をこちらに転記させていただきます。

その第一弾がコレです。

かつてサークルKやam.pmという名のコンビニ、イオンではなくジャスコが存在した、2006年のお話です。


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 あほなことをまじめに

文章が長いので、お時間のある方は読んでください

お忙しい方は最後のまとめをどうぞ



”味の境界線”といったとき、おそらく話に上がることが多いのは”うどんのおつゆ”ではないでしょうか?


見た目でいうと関東は濃い、関西は薄いという違いがありますが、これは使っている醤油が濃い口醤油か薄口醤油かの違いにあります。一般に、関東は鰹だしで濃い口醤油、関西は昆布だしで薄口醤油といわれることがありますが、実際には、関東では濃い口醤油やみりん、砂糖を煮て作る「かえし」を昆布や鰹を基本とするだしで割ってつゆにする“そばつゆ”のパターンであり、関西では昆布や鰹、鯖など多種なだしを基本として薄口醤油で味を整えるという“すまし汁”のパターンなので色の違いが生じます。


関東と関西とに分かれるということは、どこかにその境界線があるわけですが、NHKやその他民放局の番組でJR東海道線、東海道新幹線の立ち食いうどんや沿線のうどん・そば屋のつゆを調べたところ、関ヶ原付近がその境界となっていました。東京方面から濃い口醤油、大阪方面から薄口醤油と来たところ、名古屋付近でいきなり味噌だとか“きしめん”となったりもしますが、まあ、天下分け目の関ヶ原が味の分け目というか中間地点でもあったわけですが。


さて、うどんはべつにお店に行って食べるだけでなく、家で茹でたり、もっと簡単に即席カップ麺という手もあります。

日清食品から販売されている『どん兵衛』、ご存知の方もおられるか思いますが、これも東日本版と西日本版で味の作り分けがされています。日清のHPからどん兵衛の専用サイト「どんらんど」(http://donbei.jp/)を見てみると、

東日本発売

・・・、つゆは鰹の風味が薫り、油揚げは甘辛な味付けのソフトでジューシィな・・・

西日本発売

・・・、つゆは昆布と鰹だしが効き、油揚げは甘さを閉じ込めたジューシィな・・・

というように、だし(粉末スープ)とおあげの味が作り分けしてあります。


でも、お店と違って、はっきりと東日本版と西日本版とに作り分けされているどん兵衛・・・


それじゃあ、どん兵衛の東と西の境界線はどこなの?

・・・ということで調べてみました。


さらにどんらんどを見てみると「うどん・そばトリビア」のコーナーがあり、素朴なQ&Aも掲載されていますが、その中に、

❝どん兵衛の東日本、西日本の境界はどこですか?私は愛知県に住んでいます。愛知県は西日本ですか?❞

との質問があり、その回答は、

❝東西の文化の分かれ目は岐阜県の関ヶ原で分かれると言われています。どん兵衛の東西商品は、名古屋地区を境界線としております。

名古屋地区を境として、愛知県、岐阜県、三重県を含む東側で東日本向け製品、福井県、富山県、石川県を含む西側で西日本向け製品を販売しております。

ぜひ、関西にお出かけの際に西日本向けどん兵衛をお求めいただきまして、味の違いをお楽しみください。❞

となっています。実際にどん兵衛の担当者が地域の味を丹念に調査した結果、やはり関ヶ原を境としたようです。



でも、実際に販売する場合、スーパーやコンビニの系列や配送の都合によっては上記のようにはならないのではないでしょうか?


それじゃあ、どん兵衛の東と西の境界線はどこなの?

・・・ということで実際に調べてみました


調べ方は、東西に走る大きな国道沿いにある、あるいはそこから見えるスーパーやコンビニで売られているどん兵衛、今回は「きつねうどん」が東日本版か西日本版かを確認します。なお、国道から離れた県道などにあるお店は地元民ではないのでどこにあるかわからず、今回はご容赦願いたく。また、夜に調査していることが多いためにスーパーは閉店しており、コンビニがメインであることもご容赦ください。


ちなみに、どちらなのかを確認するのにべつに食べる、あるいは買う必要はありません。ちゃんと見分け方があります。?は載ってないものもあります。


<見分け方>

(1)フタの上半分の“どん兵衛”の文字と、下半分の写真との境界線の左端に、東日本版はEastの頭文字で(E)、西日本版はWestの頭文字で(W)が表記されています。

(2)カップの原材料表示枠の下側に(E)または(W)が表記されています。


また、実際に購入した場合、

(3)きつねうどんの場合、中に入っている粉末スープの袋の色が東日本版は青色西日本版は赤色です。


さらに予備知識として、コンビニは、

 関東系コンビニ:セブン-イレブン、ミニストップ、am・pm

 関西系コンビニ:ローソン、ファミリーマート

 中京系コンビニ:サークルK

といったように勢力があります。また、スーパーは地元に密着したものと考えてコンビニより影響力が大きいと判断します。


では調査結果です。

ここからはお暇な方はマピオンやGoogleのマップなどの地図を見ながら読んでいただくとどの辺りなのかわかると思います。


【1】国道21号線

まずは肝心の関ヶ原を通る、国道21号線です。岐阜県岐阜市を通り、大垣市、不破郡関ヶ原町へと続く国道で、五街道のひとつである中山道の途中になります。

大垣方面から西に向かっていると、わりと最近できたようなキレイな外装のコンビニがあり、

・セブン-イレブン垂井町宮代店(岐阜県不破郡垂井町)では、(E)

ここからさらに西に向かい、

・ローソン垂井不帰店(不破郡垂井町)は、(E)

・サークルK不破関ヶ原店(不破郡関ヶ原町)も、(E)

と続きますが、名神高速の関ヶ原ICより西側は高速と並行し山の中へと入るため、この先なかなかコンビニやスーパーは見当たりません。

しばらく走るとやっとコンビニが見つかり、

・ローソン山東柏原店(滋賀県米原市柏原)では、(W)

さらに、

・ローソン米原一色店(米原市一色)は、(W)

・ローソン米原インター店(米原市寺倉)も、(W)

関西系コンビニ、というかローソンが続きます。

米原で国道8号線と合流するため、国道8号線を南下します。

そして、たまたま紛れ込んだJR東海道線、東海道新幹線の米原駅の西側でコンビニを発見し、

・サークルK米原駅前店(米原市下多良)では、(W)

が置いてあり、関西系以外のコンビニで西日本版に変わっていることを確認。

ゆえに、(W)が続けて置いてあったので、最初に置いてあったローソン山東柏原店を西日本版の端と考え、結果、米原市と関ヶ原町、すなわち滋賀県と岐阜県の県境を境界線と判断します


【2】国道1号線

続いて国道1号線。言わずと知れた東京都中央区から大阪府大阪市へ至る国道で、五街道のひとつである東海道になります。

三重県亀山市で東名阪自動車道と交差しますが、その亀山ICや付近の関宿あたりにコンビニやスーパーがあり、

・ファミリーマート亀山インター店(三重県亀山市太岡寺町)では、(E)

・サンクス亀山インター店(亀山市小野町)は、(E)

・三重県のチェーンストアであるニューライフ関店(亀山市関町)も、(E)

・鈴鹿峠直前のミニストップ関町木崎店(亀山市関町)でも、(E)

となっています。

鈴鹿峠を越える間はコンビニやスーパーは見当たらず、越えると道の駅「あいの土山」のほぼ向かいにやっと現れ、

・ファミリーマート栄屋田村神社前店(滋賀県甲賀市土山町)では、(W)

・もう少し西のローソン北土山店(甲賀市土山町)で、(W)

・ローソン土山頓宮店(甲賀市土山町)も、(W)

関西系以外を見つけるためにさらに進むと、

・セブン-イレブン土山町市場店(甲賀市土山町)で、(W)

国道1号線沿いにはなかなかなく、だいぶ西に進んでやっと見つけた、

・サンクス水口さつきが丘店(甲賀市水口町)で、(W)

・サークルK湖南夏見店(滋賀県湖南市夏見)も、(W)

となり、関西系以外のコンビニでも西日本版であることを確認。

ゆえに、最初に置いてあったファミリーマート栄屋田村神社前店を西日本版の端と考え、結果、鈴鹿峠、すなわち滋賀県と三重県の県境を境界線と判断します


【3】国道25号線

上記の亀山市で国道1号線から分岐する国道で、実際には三重県四日市市から大阪府大阪市まで繋がりますが、名阪国道という名のバイパスと旧道の両方が国道25号線として存在します。

亀山市から名阪国道に入って大阪方面に進むと、伊賀市に入って左手に伊賀SAがあり、そこに、

・ローソン伊賀インター店(三重県伊賀市柘植町)で、(W)

があります。

ここから旧道へと下りて西へと調べていきますが、

・サークルK名阪上柘植インター店(伊賀市柘植町)は、(E)

・サークルK伊賀下柘植店(伊賀市下柘植)も、(E)

と続き、もう少し進んで、

・和歌山を中心に南紀に展開するチェーンストアのオークワ伊賀新堂店(伊賀市新堂)では、(W)

・ファミリーマート伊賀壬生野店(伊賀市西乃澤)でも、(W)

というように、関西系と中京系の真っ向対決が始まります。

途中で、マックスバリュ中部(三重県松阪市に本社)に属するマックスバリュ佐那具店(伊賀市佐那具町)がありますが、きつねうどんは(W)、でも、かき揚げ天ぷらうどんは(E)というごちゃ混ぜも起こっています。

以降、旧道付近では、

・ファミリーマート上野佐那具店(伊賀市佐那具町)、(W)

・サークルK上野西条店(伊賀市西条)、(E)

・ファミリーマート上野服部町店(伊賀市服部町)、(W)

・サークルK上野平野店(伊賀市上野東町)、(E)

・ミニストップ上野平野店(伊賀市上野西町)、(E)

・ローソン伊賀平野店(伊賀市平野城北町)、(W)

・ローソン上野小田店(伊賀市小田町)、(W)

また、中部・関東地方に展開するユニーのGMS(General Merchandise Store、総合スーパー)であるアピタもあり、

・アピタ伊賀上野店(伊賀市服部町)、(E)

バイパスのほうでは、中瀬ICのところに、

・ファミリーマート中瀬インター店(伊賀市西明寺)、(W)

・ミニストップ上野中瀬インター店(伊賀市荒木)、(E)

・オークワ緑ヶ丘店(伊賀市緑ヶ丘南町)、(W)

といった様子で混沌と混ざり、その勢力はほぼ五分のようです。

ゆえに、西日本版と東日本版の勢力拮抗地域と考え、結果、三重県伊賀市を境界線と判断します


【4】国道42号線

南紀の海岸線を走る国道で、昔の熊野街道にあたりますが、実は起点は静岡県浜松市です。国道1号線と重複するためわかりにくいですが、静岡県と愛知県の県境付近から国道1号線と分かれて国道42号線単独になり、渥美半島の先端から海を渡って三重県鳥羽市へと続きます。

三重県のだいたい真ん中付近に伊勢自動車道の勢和多気ICがあり、そのすぐそば、

・ファミリーマート勢和多気インター店(三重県多気郡多気町)では、(E)

であることを確認。

国道42号線は三重県を南北に長く走るため、調査位置を一気に南へと移動しますが、

・サークルKみやま相賀店(三重県北牟婁郡紀北町)は、(E)

・サークルK尾鷲庁舎前店(三重県尾鷲市坂場町)も、(E)

・サークルK尾鷲総合病院前店(尾鷲市古戸野町)でも、(E)

・サークルK熊野花のいわや店(三重県熊野市有馬町)、(E)

・サークルK熊野有馬店(熊野市有馬町)、(E)

・サークルK紀州御浜店(三重県南牟婁郡御浜町)、(E)

・サークルK紀州鵜殿店(南牟婁郡紀宝町)、(E)

というように、この国道沿いはサークルKの独壇場で、ほかのコンビニを見かけません。

熊野灘に流れ込む熊野川が三重県と和歌山県の県境になっており、熊野大橋を渡って和歌山県新宮市入り。

ここで、先述した和歌山・南紀をメインとするスーパーのオークワを発見し、

・オークワ神倉店(和歌山県新宮市神倉)では、(W)

また、イオンのGMSであるジャスコもあり、

・ジャスコ新宮店(和歌山県新宮市橋本)では、全ての種類のどん兵衛で(E)と(W)の両方をほぼ同量陳列

となり、西日本版が出現。

もう少し南には、広大な敷地面積にユニクロやライトオン(衣料)、ケーズデンキ(家電)、オートバックス(カー用品)、ジストシネマ4(シネマ)などといった専門店が集合したスーパーセンターがあり、その中でも、

・スーパーセンターオークワ南紀店(新宮市佐野)、(W)

です。

ただ、コンビニとしてはこれより南でもサークルKの勢力が強く、

・サークルK紀州三輪崎店(新宮市三輪崎)、(E)

・サークルK紀州うぐい店(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町)、(E)

・サークルK那智勝浦店(東牟婁郡那智勝浦町)、(E)

・ローソン勝浦町朝日店(東牟婁郡那智勝浦町)、(W)

・サークルK紀州太地店(東牟婁郡太地町)、(E)

・ローソン古座町古座店(東牟婁郡串本町)、(W)

・サークルK串本中央店(東牟婁郡串本町)、(E)

・ローソン串本町串本店(東牟婁郡串本町)、(W)

というように、和歌山の南端まで東日本版で頑張ります。

しかし、コンビニはローソン、スーパーはオークワやAコープなどが和歌山県では西日本版です。

ゆえに、西日本版と東日本版が混在していたジャスコ新宮店を基準とし、サークルKの勢力も加味して、結果、三重県と和歌山県の県境・熊野川より少し和歌山県よりとし、和歌山県新宮市を境界線と判断します


【5】国道8号線

新潟県新潟市を起点として日本海沿いを京都府京都市へと至る国道で、古代の北陸道を含みます。

調査した日が低気圧の影響で雨風激しいときで、日本海の荒波が・・・。

新潟県の西の端になる糸魚川市で、長野県の白馬方面から続く国道148号線との交差点付近から調査開始しますが、その前に、

・ローソン大町木崎店(長野県大町市)では、(E)

であり、長野県内では東日本版です。

さて、交差点から少し西に進むと、

・セブン-イレブン糸魚川寺島店(新潟県糸魚川市寺島)で、(E)

・ローソンヴィラ・オレッタ糸魚川店(糸魚川市寺島)も、(E)

であることを確認。

これより西、青海より先は北陸自動車道と並行して走りますが、完全な海沿いで、崖にへばりついて走るような感じであり、店や家は全然見えません。

途中で親不知ICや道の駅「越後市振の関」などを越え、富山県との県境を越えたときにポツンと左手に、

・Yショップ境店(富山県下新川郡朝日町)で、(W)

を発見。

さらに朝日町の中央に向かうと、

・サンクス朝日道下店(下新川郡朝日町)、(W)

・ローソン朝日町平柳店(下新川郡朝日町)、(W)

・ローソン朝日インター店(下新川郡朝日町)、(W)

・サークルK入善くぬぎ山店(下新川郡入善町)、(W)

であり、完全に西日本版に変わっていることを確認。

ゆえに、最初に現れたYショップ境店を西日本版の端と考え、結果、朝日町と糸魚川市米原市と関ヶ原町、すなわち富山県と新潟県の県境を境界線と判断します


まとめ

以上【1】〜【5】、国道1号線、8号線、21号線、25号線、42号線について調べた結果をまとめると、下の地図のようになります。


今回は3桁の国道や南北に走る国道については調査していないので、岐阜県と富山県および福井県との県境や、三重県と和歌山県の山の中での県境については不明瞭です。

山や峠、海岸線沿いなどで地形の制約があると集落が途切れやすく、配送の利を考えるとここが分かれ目となりやすいことがわかります。これが結果として県境と合致しています。

それに対し、平地ではその制約がないため、販売するコンビニやスーパーの勢力により境界線が県境から大きく動くことになります。今回の調査では、国道25号線は伊賀市までで終了としましたが、その西側にある名張市でも同様に東日本版と西日本版が混在すると考えられます。また、日清のHPに掲載されている境界線に対し、実際には三重県西部には関西系の勢力が強く攻め入り、三重県南部から和歌山県東部・南部にかけてはサークルKが孤軍奮闘している結果となりました。


最後に、東日本版と西日本版をよく見ると、前者のほうが内容量が1g多く、カロリーも1kcal高いです。また、原材料の順番も微妙に異なります。


ちなみに、東洋水産から販売されている『赤いきつね』では、全国版、関西版、北海道版の3つに分かれているので、お暇な方は調査をどうぞ(笑

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ということで、どん兵衛きつねうどんの東日本版と西日本版の境界線を調査したのですが、

・富山県と岐阜県を通る国道41号線

・福井県と岐阜県を通る国道158号線、157号線

・滋賀県と岐阜県を通る国道303号線

・三重県と奈良県を通る国道166号線、169号線

・和歌山県と奈良県を通る国道168号線

を調査すれば線を繋ぐことができたかもしれませんが、いかんせん3桁の国道、ましてや山の中を通るのでなかなかスーパー、コンビニがなく調査は難航していたと思われます。

いまでは店舗がなくなったり流通状況が変わったりで変化があるかもしれませんが、さすがに調べ直す余裕がないです(笑。