原題:実験と試行錯誤と議論の彼方にベーシックインカムが実現なるか
ロサンゼルス市におけるベーシックインカムの社会的な実験だけでなく、日本国内での「給付金」をめぐる議論の中で見え始めている何かがあります。
給付金をめぐる議論の中で注目しているのは「事務経費」です。とくに『現金給付にまとめたほうが経費を抑制できる』という指摘は示唆に富んでいる気がします。
そんなに経費ばかり使って無駄だという意見は納得ですが、だからといって失意におちいることはありません。そもそも実験の要素が強いからです。給付金を「分けて届ける」というのも無駄ばかり目立ちますが客観的な事実が表に出てきていると捉えれば前向きになるのではないでしょうか。つまり、「膨大な経費から学ぶ」というもの。いちおう色々とデータを見たりしましたが『給付金は子供と非課税世帯のみで終了』とまでは言われていないんですよね。もちろん『低所得者にも届ける』とは言われていませんが選挙前には補償や保護や「新しい資本主義」についての話がありました。あらためて首相に就任した岸田文雄自民党総裁の発言も可能な範囲で聞き返してみました。けっこう色々と試行錯誤をしていこうという意欲も感じます。あくまでも私の個人的な感想ですが。
ベーシックインカムを提言しつつその金額が『7万円』というのではそもそもベーシックインカムにならないだろうと思っていたのですが、金額に注目するだけで終わらせなければ「議論のスタート地点に立てた」と解釈することもできます。つまり、これからです。絶望せずに根気強く粘って議論していきましょう。
目的別に給付金を配布すると事務経費が膨大になるから一律給付金にしようとなれば、それもまた「経験からの学び」と言えます。それとマイナンバーカードの普及はもう少し進んでも良いのではないかなと思うのですがどうでしょう。本当の意味で「すでに国民ひとりひとりに割り振られているマイナンバーを有効活用」して、「プッシュ型で迅速な給付金や電子マネーの配布」を実現して、さらに経費節約効果の高い社会制度に昇華させていけばいいなと願っています。
私自身いろいろと勉強になっていますので引き続き考え続けていきます。
【2024年12月加筆】
[Updated December 2024]
ベーシックインカム(BI)は、すべての市民に無条件で一定の金額を定期的に支給する制度です。この制度は、貧困の削減、経済的不平等の是正、労働市場の柔軟性向上など、多くの社会的・経済的課題に対する解決策として注目されています。以下に、2024年12月時点の最新情報を加味し、ベーシックインカムに関する重要なポイントをまとめます。
### ベーシックインカムの背景と目的
ベーシックインカムの概念は、16世紀のヨーロッパに遡ります。トマス・モアの『ユートピア』や、トマス・ペインの『人間の権利』などで提唱されました。現代においては、貧困の削減や経済的不平等の是正、労働市場の柔軟性向上など、多くの社会的・経済的課題に対する解決策として注目されています。
### ベーシックインカムのメリット
1. **貧困削減**: ベーシックインカムは、貧困層に直接的な経済支援を提供し、生活の安定を図ることができます。これにより、貧困率の低下が期待されます。
2. **経済的不平等の是正**: 所得の再分配を通じて、経済的不平等を是正する効果があります。特に、低所得者層への支援が強化されることで、社会全体の経済的安定が図られます。
3. **労働市場の柔軟性向上**: ベーシックインカムは、労働者がより自由に職業選択を行えるようにし、労働市場の柔軟性を高めます。これにより、労働者の満足度や生産性の向上が期待されます。
### ベーシックインカムのデメリットと課題
1. **財源の確保**: ベーシックインカムを実施するためには、巨額の財源が必要です。この財源をどのように確保するかが大きな課題となります。
2. **労働意欲の低下**: 無条件で所得が支給されることで、一部の人々が労働意欲を失う可能性があります。これにより、労働市場の活力が低下する懸念があります。
3. **既存の社会保障制度との調整**: ベーシックインカムを導入する際には、既存の社会保障制度との調整が必要です。これにより、制度の複雑化や重複が生じる可能性があります。
### 世界各国のベーシックインカム実験
ベーシックインカムの実現可能性を探るため、世界各国で様々な実験が行われています。以下に、いくつかの代表的な実験を紹介します。
1. **フィンランド**: フィンランドでは、2017年から2018年にかけて、無作為に選ばれた2000人に対して毎月560ユーロを支給する実験が行われました。この実験の結果、受給者の生活満足度が向上し、精神的な健康状態も改善されたことが報告されています。
2. **カナダ**: カナダのオンタリオ州では、2017年から2019年にかけて、低所得者層を対象に毎月最大で1500カナダドルを支給する実験が行われました。この実験の結果、受給者の生活の質が向上し、貧困率の低下が確認されました。
3. **アメリカ**: アメリカのカリフォルニア州ストックトン市では、2019年から2021年にかけて、無作為に選ばれた125人に対して毎月500ドルを支給する実験が行われました。この実験の結果、受給者の経済的安定が向上し、労働市場への参加意欲も高まったことが報告されています。
### 日本におけるベーシックインカムの議論
日本でも、ベーシックインカムの導入に向けた議論が進んでいます。特に、新型コロナウイルスの影響で経済的な不安が高まる中、ベーシックインカムの必要性が再認識されています。
1. **財源の確保**: 日本でベーシックインカムを導入するためには、巨額の財源が必要です。これに対して、消費税の引き上げや富裕層への課税強化などが提案されています。
2. **労働市場への影響**: ベーシックインカムの導入により、労働市場への影響が懸念されています。特に、労働意欲の低下や労働市場の活力低下が問題視されています。
3. **既存の社会保障制度との調整**: 日本では、既存の社会保障制度との調整が必要です。これにより、制度の複雑化や重複が生じる可能性があります。
### 最新の動向と今後の展望
2024年12月時点での最新情報として、以下の動向が注目されています。
1. **デジタル通貨の活用**: ベーシックインカムの支給方法として、デジタル通貨の活用が検討されています。これにより、支給の効率化や透明性の向上が期待されています。
2. **地域ごとの実験**: 日本国内でも、地域ごとにベーシックインカムの実験が行われています。これにより、地域ごとの課題や効果を検証することができます。
3. **国際的な連携**: ベーシックインカムの導入に向けて、国際的な連携が進んでいます。特に、他国の成功事例や失敗事例を参考にすることで、より効果的な制度設計が可能となります。
### 結論
ベーシックインカムは、貧困の削減や経済的不平等の是正、労働市場の柔軟性向上など、多くの社会的・経済的課題に対する解決策として注目されています。しかし、財源の確保や労働意欲の低下、既存の社会保障制度との調整など、多くの課題も存在します。今後の動向を注視しつつ、実験と試行錯誤を重ねることで、より効果的な制度設計が求められます。
オリジナル投稿:2021年12月2日