2022年4月18日月曜日

どん兵衛 東日本版vs西日本版|味の境界線はどこだ?2006年調査と2026年の答え合わせ

原題:どん兵衛 東日本版 vs 西日本版 味の境界線はどこだ? 


以前に書きましたが、過去に別個所で書いていたブログを消去する作業を行っています。

ただ、「これは残しておきたいよね」という内容をこちらに転記させていただきます。

その第一弾がコレです。

かつてサークルKやam.pmという名のコンビニ、イオンではなくジャスコが存在した、2006年のお話です。


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 あほなことをまじめに

文章が長いので、お時間のある方は読んでください

お忙しい方は最後のまとめをどうぞ



”味の境界線”といったとき、おそらく話に上がることが多いのは”うどんのおつゆ”ではないでしょうか?


見た目でいうと関東は濃い、関西は薄いという違いがありますが、これは使っている醤油が濃い口醤油か薄口醤油かの違いにあります。一般に、関東は鰹だしで濃い口醤油、関西は昆布だしで薄口醤油といわれることがありますが、実際には、関東では濃い口醤油やみりん、砂糖を煮て作る「かえし」を昆布や鰹を基本とするだしで割ってつゆにする“そばつゆ”のパターンであり、関西では昆布や鰹、鯖など多種なだしを基本として薄口醤油で味を整えるという“すまし汁”のパターンなので色の違いが生じます。


関東と関西とに分かれるということは、どこかにその境界線があるわけですが、NHKやその他民放局の番組でJR東海道線、東海道新幹線の立ち食いうどんや沿線のうどん・そば屋のつゆを調べたところ、関ヶ原付近がその境界となっていました。東京方面から濃い口醤油、大阪方面から薄口醤油と来たところ、名古屋付近でいきなり味噌だとか“きしめん”となったりもしますが、まあ、天下分け目の関ヶ原が味の分け目というか中間地点でもあったわけですが。


さて、うどんはべつにお店に行って食べるだけでなく、家で茹でたり、もっと簡単に即席カップ麺という手もあります。

日清食品から販売されている『どん兵衛』、ご存知の方もおられるか思いますが、これも東日本版と西日本版で味の作り分けがされています。日清のHPからどん兵衛の専用サイト「どんらんど」(http://donbei.jp/)を見てみると、

東日本発売

・・・、つゆは鰹の風味が薫り、油揚げは甘辛な味付けのソフトでジューシィな・・・

西日本発売

・・・、つゆは昆布と鰹だしが効き、油揚げは甘さを閉じ込めたジューシィな・・・

というように、だし(粉末スープ)とおあげの味が作り分けしてあります。


でも、お店と違って、はっきりと東日本版と西日本版とに作り分けされているどん兵衛・・・


それじゃあ、どん兵衛の東と西の境界線はどこなの?

・・・ということで調べてみました。


さらにどんらんどを見てみると「うどん・そばトリビア」のコーナーがあり、素朴なQ&Aも掲載されていますが、その中に、

❝どん兵衛の東日本、西日本の境界はどこですか?私は愛知県に住んでいます。愛知県は西日本ですか?❞

との質問があり、その回答は、

❝東西の文化の分かれ目は岐阜県の関ヶ原で分かれると言われています。どん兵衛の東西商品は、名古屋地区を境界線としております。

名古屋地区を境として、愛知県、岐阜県、三重県を含む東側で東日本向け製品、福井県、富山県、石川県を含む西側で西日本向け製品を販売しております。

ぜひ、関西にお出かけの際に西日本向けどん兵衛をお求めいただきまして、味の違いをお楽しみください。❞

となっています。実際にどん兵衛の担当者が地域の味を丹念に調査した結果、やはり関ヶ原を境としたようです。

でも、実際に販売する場合、スーパーやコンビニの系列や配送の都合によっては上記のようにはならないのではないでしょうか?

それじゃあ、どん兵衛の東と西の境界線はどこなの?

・・・ということで実際に調べてみました

調べ方は、東西に走る大きな国道沿いにある、あるいはそこから見えるスーパーやコンビニで売られているどん兵衛、今回は「きつねうどん」が東日本版か西日本版かを確認します。なお、国道から離れた県道などにあるお店は地元民ではないのでどこにあるかわからず、今回はご容赦願いたく。また、夜に調査していることが多いためにスーパーは閉店しており、コンビニがメインであることもご容赦ください。


ちなみに、どちらなのかを確認するのにべつに食べる、あるいは買う必要はありません。ちゃんと見分け方があります。?は載ってないものもあります。


<見分け方>

(1)フタの上半分の“どん兵衛”の文字と、下半分の写真との境界線の左端に、東日本版はEastの頭文字で(E)、西日本版はWestの頭文字で(W)が表記されています。

(2)カップの原材料表示枠の下側に(E)または(W)が表記されています。


また、実際に購入した場合、

(3)きつねうどんの場合、中に入っている粉末スープの袋の色が東日本版は青色西日本版は赤色です。


さらに予備知識として、コンビニは、

 関東系コンビニ:セブン-イレブン、ミニストップ、am・pm

 関西系コンビニ:ローソン、ファミリーマート

 中京系コンビニ:サークルK

といったように勢力があります。また、スーパーは地元に密着したものと考えてコンビニより影響力が大きいと判断します。


では調査結果です。

ここからはお暇な方はマピオンやGoogleのマップなどの地図を見ながら読んでいただくとどの辺りなのかわかると思います。


【1】国道21号線

まずは肝心の関ヶ原を通る、国道21号線です。岐阜県岐阜市を通り、大垣市、不破郡関ヶ原町へと続く国道で、五街道のひとつである中山道の途中になります。

大垣方面から西に向かっていると、わりと最近できたようなキレイな外装のコンビニがあり、

・セブン-イレブン垂井町宮代店(岐阜県不破郡垂井町)では、(E)

ここからさらに西に向かい、

・ローソン垂井不帰店(不破郡垂井町)は、(E)

・サークルK不破関ヶ原店(不破郡関ヶ原町)も、(E)

と続きますが、名神高速の関ヶ原ICより西側は高速と並行し山の中へと入るため、この先なかなかコンビニやスーパーは見当たりません。

しばらく走るとやっとコンビニが見つかり、

・ローソン山東柏原店(滋賀県米原市柏原)では、(W)

さらに、

・ローソン米原一色店(米原市一色)は、(W)

・ローソン米原インター店(米原市寺倉)も、(W)

関西系コンビニ、というかローソンが続きます。

米原で国道8号線と合流するため、国道8号線を南下します。

そして、たまたま紛れ込んだJR東海道線、東海道新幹線の米原駅の西側でコンビニを発見し、

・サークルK米原駅前店(米原市下多良)では、(W)

が置いてあり、関西系以外のコンビニで西日本版に変わっていることを確認。

ゆえに、(W)が続けて置いてあったので、最初に置いてあったローソン山東柏原店を西日本版の端と考え、結果、米原市と関ヶ原町、すなわち滋賀県と岐阜県の県境を境界線と判断します


【2】国道1号線

続いて国道1号線。言わずと知れた東京都中央区から大阪府大阪市へ至る国道で、五街道のひとつである東海道になります。

三重県亀山市で東名阪自動車道と交差しますが、その亀山ICや付近の関宿あたりにコンビニやスーパーがあり、

・ファミリーマート亀山インター店(三重県亀山市太岡寺町)では、(E)

・サンクス亀山インター店(亀山市小野町)は、(E)

・三重県のチェーンストアであるニューライフ関店(亀山市関町)も、(E)

・鈴鹿峠直前のミニストップ関町木崎店(亀山市関町)でも、(E)

となっています。

鈴鹿峠を越える間はコンビニやスーパーは見当たらず、越えると道の駅「あいの土山」のほぼ向かいにやっと現れ、

・ファミリーマート栄屋田村神社前店(滋賀県甲賀市土山町)では、(W)

・もう少し西のローソン北土山店(甲賀市土山町)で、(W)

・ローソン土山頓宮店(甲賀市土山町)も、(W)

関西系以外を見つけるためにさらに進むと、

・セブン-イレブン土山町市場店(甲賀市土山町)で、(W)

国道1号線沿いにはなかなかなく、だいぶ西に進んでやっと見つけた、

・サンクス水口さつきが丘店(甲賀市水口町)で、(W)

・サークルK湖南夏見店(滋賀県湖南市夏見)も、(W)

となり、関西系以外のコンビニでも西日本版であることを確認。

ゆえに、最初に置いてあったファミリーマート栄屋田村神社前店を西日本版の端と考え、結果、鈴鹿峠、すなわち滋賀県と三重県の県境を境界線と判断します


【3】国道25号線

上記の亀山市で国道1号線から分岐する国道で、実際には三重県四日市市から大阪府大阪市まで繋がりますが、名阪国道という名のバイパスと旧道の両方が国道25号線として存在します。

亀山市から名阪国道に入って大阪方面に進むと、伊賀市に入って左手に伊賀SAがあり、そこに、

・ローソン伊賀インター店(三重県伊賀市柘植町)で、(W)

があります。

ここから旧道へと下りて西へと調べていきますが、

・サークルK名阪上柘植インター店(伊賀市柘植町)は、(E)

・サークルK伊賀下柘植店(伊賀市下柘植)も、(E)

と続き、もう少し進んで、

・和歌山を中心に南紀に展開するチェーンストアのオークワ伊賀新堂店(伊賀市新堂)では、(W)

・ファミリーマート伊賀壬生野店(伊賀市西乃澤)でも、(W)

というように、関西系と中京系の真っ向対決が始まります。

途中で、マックスバリュ中部(三重県松阪市に本社)に属するマックスバリュ佐那具店(伊賀市佐那具町)がありますが、きつねうどんは(W)、でも、かき揚げ天ぷらうどんは(E)というごちゃ混ぜも起こっています。

以降、旧道付近では、

・ファミリーマート上野佐那具店(伊賀市佐那具町)、(W)

・サークルK上野西条店(伊賀市西条)、(E)

・ファミリーマート上野服部町店(伊賀市服部町)、(W)

・サークルK上野平野店(伊賀市上野東町)、(E)

・ミニストップ上野平野店(伊賀市上野西町)、(E)

・ローソン伊賀平野店(伊賀市平野城北町)、(W)

・ローソン上野小田店(伊賀市小田町)、(W)

また、中部・関東地方に展開するユニーのGMS(General Merchandise Store、総合スーパー)であるアピタもあり、

・アピタ伊賀上野店(伊賀市服部町)、(E)

バイパスのほうでは、中瀬ICのところに、

・ファミリーマート中瀬インター店(伊賀市西明寺)、(W)

・ミニストップ上野中瀬インター店(伊賀市荒木)、(E)

・オークワ緑ヶ丘店(伊賀市緑ヶ丘南町)、(W)

といった様子で混沌と混ざり、その勢力はほぼ五分のようです。

ゆえに、西日本版と東日本版の勢力拮抗地域と考え、結果、三重県伊賀市を境界線と判断します


【4】国道42号線

南紀の海岸線を走る国道で、昔の熊野街道にあたりますが、実は起点は静岡県浜松市です。国道1号線と重複するためわかりにくいですが、静岡県と愛知県の県境付近から国道1号線と分かれて国道42号線単独になり、渥美半島の先端から海を渡って三重県鳥羽市へと続きます。

三重県のだいたい真ん中付近に伊勢自動車道の勢和多気ICがあり、そのすぐそば、

・ファミリーマート勢和多気インター店(三重県多気郡多気町)では、(E)

であることを確認。

国道42号線は三重県を南北に長く走るため、調査位置を一気に南へと移動しますが、

・サークルKみやま相賀店(三重県北牟婁郡紀北町)は、(E)

・サークルK尾鷲庁舎前店(三重県尾鷲市坂場町)も、(E)

・サークルK尾鷲総合病院前店(尾鷲市古戸野町)でも、(E)

・サークルK熊野花のいわや店(三重県熊野市有馬町)、(E)

・サークルK熊野有馬店(熊野市有馬町)、(E)

・サークルK紀州御浜店(三重県南牟婁郡御浜町)、(E)

・サークルK紀州鵜殿店(南牟婁郡紀宝町)、(E)

というように、この国道沿いはサークルKの独壇場で、ほかのコンビニを見かけません。

熊野灘に流れ込む熊野川が三重県と和歌山県の県境になっており、熊野大橋を渡って和歌山県新宮市入り。

ここで、先述した和歌山・南紀をメインとするスーパーのオークワを発見し、

・オークワ神倉店(和歌山県新宮市神倉)では、(W)

また、イオンのGMSであるジャスコもあり、

・ジャスコ新宮店(和歌山県新宮市橋本)では、全ての種類のどん兵衛で(E)と(W)の両方をほぼ同量陳列

となり、西日本版が出現。

もう少し南には、広大な敷地面積にユニクロやライトオン(衣料)、ケーズデンキ(家電)、オートバックス(カー用品)、ジストシネマ4(シネマ)などといった専門店が集合したスーパーセンターがあり、その中でも、

・スーパーセンターオークワ南紀店(新宮市佐野)、(W)

です。

ただ、コンビニとしてはこれより南でもサークルKの勢力が強く、

・サークルK紀州三輪崎店(新宮市三輪崎)、(E)

・サークルK紀州うぐい店(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町)、(E)

・サークルK那智勝浦店(東牟婁郡那智勝浦町)、(E)

・ローソン勝浦町朝日店(東牟婁郡那智勝浦町)、(W)

・サークルK紀州太地店(東牟婁郡太地町)、(E)

・ローソン古座町古座店(東牟婁郡串本町)、(W)

・サークルK串本中央店(東牟婁郡串本町)、(E)

・ローソン串本町串本店(東牟婁郡串本町)、(W)

というように、和歌山の南端まで東日本版で頑張ります。

しかし、コンビニはローソン、スーパーはオークワやAコープなどが和歌山県では西日本版です。

ゆえに、西日本版と東日本版が混在していたジャスコ新宮店を基準とし、サークルKの勢力も加味して、結果、三重県と和歌山県の県境・熊野川より少し和歌山県よりとし、和歌山県新宮市を境界線と判断します


【5】国道8号線

新潟県新潟市を起点として日本海沿いを京都府京都市へと至る国道で、古代の北陸道を含みます。

調査した日が低気圧の影響で雨風激しいときで、日本海の荒波が・・・。

新潟県の西の端になる糸魚川市で、長野県の白馬方面から続く国道148号線との交差点付近から調査開始しますが、その前に、

・ローソン大町木崎店(長野県大町市)では、(E)

であり、長野県内では東日本版です。

さて、交差点から少し西に進むと、

・セブン-イレブン糸魚川寺島店(新潟県糸魚川市寺島)で、(E)

・ローソンヴィラ・オレッタ糸魚川店(糸魚川市寺島)も、(E)

であることを確認。

これより西、青海より先は北陸自動車道と並行して走りますが、完全な海沿いで、崖にへばりついて走るような感じであり、店や家は全然見えません。

途中で親不知ICや道の駅「越後市振の関」などを越え、富山県との県境を越えたときにポツンと左手に、

・Yショップ境店(富山県下新川郡朝日町)で、(W)

を発見。

さらに朝日町の中央に向かうと、

・サンクス朝日道下店(下新川郡朝日町)、(W)

・ローソン朝日町平柳店(下新川郡朝日町)、(W)

・ローソン朝日インター店(下新川郡朝日町)、(W)

・サークルK入善くぬぎ山店(下新川郡入善町)、(W)

であり、完全に西日本版に変わっていることを確認。

ゆえに、最初に現れたYショップ境店を西日本版の端と考え、結果、朝日町と糸魚川市米原市と関ヶ原町、すなわち富山県と新潟県の県境を境界線と判断します


まとめ

以上【1】〜【5】、国道1号線、8号線、21号線、25号線、42号線について調べた結果をまとめると、下の地図のようになります。


今回は3桁の国道や南北に走る国道については調査していないので、岐阜県と富山県および福井県との県境や、三重県と和歌山県の山の中での県境については不明瞭です。

山や峠、海岸線沿いなどで地形の制約があると集落が途切れやすく、配送の利を考えるとここが分かれ目となりやすいことがわかります。これが結果として県境と合致しています。

それに対し、平地ではその制約がないため、販売するコンビニやスーパーの勢力により境界線が県境から大きく動くことになります。今回の調査では、国道25号線は伊賀市までで終了としましたが、その西側にある名張市でも同様に東日本版と西日本版が混在すると考えられます。また、日清のHPに掲載されている境界線に対し、実際には三重県西部には関西系の勢力が強く攻め入り、三重県南部から和歌山県東部・南部にかけてはサークルKが孤軍奮闘している結果となりました。


最後に、東日本版と西日本版をよく見ると、前者のほうが内容量が1g多く、カロリーも1kcal高いです。また、原材料の順番も微妙に異なります。


ちなみに、東洋水産から販売されている『赤いきつね』では、全国版、関西版、北海道版の3つに分かれているので、お暇な方は調査をどうぞ(笑

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ということで、どん兵衛きつねうどんの東日本版と西日本版の境界線を調査したのですが、

・富山県と岐阜県を通る国道41号線

・福井県と岐阜県を通る国道158号線、157号線

・滋賀県と岐阜県を通る国道303号線

・三重県と奈良県を通る国道166号線、169号線

・和歌山県と奈良県を通る国道168号線

を調査すれば線を繋ぐことができたかもしれませんが、いかんせん3桁の国道、ましてや山の中を通るのでなかなかスーパー、コンビニがなく調査は難航していたと思われます。

いまでは店舗がなくなったり流通状況が変わったりで変化があるかもしれませんが、さすがに調べ直す余裕がないです(笑)。



【2026年4月加筆】
[Updated Spr 2026]


どん兵衛の「味の境界線」は、いまどうなっているのか

――2026年版・流通/文化/マーケティングの視点から

2006年当時、国道を走り、コンビニやスーパーを一軒ずつ確認して導き出した
「どん兵衛 東日本版 vs 西日本版」の境界線。
その調査は、いま読み返しても“狂気じみた丁寧さ”と同時に、
流通と文化がどれほど密接に結びついているかを見事に可視化しています。

では、それから約20年が経過した2026年現在、
この「味の境界線」はどうなっているのでしょうか。


まず結論:境界線は「消えていない」が、「揺らいでいる」

結論から言えば、
東西の味分けは現在も存在する
✅ ただし、境界線は固定された線ではなく“ゾーン”化している

というのが、2026年時点での実像です。

日清食品は現在も公式に、どん兵衛を

  • 東日本向け
  • 西日本向け

の2系統で製造・出荷しています。
この方針自体は一切変わっていません。

しかし、
あなたが実地で調査した2006年と比べると、
「売り場での出会い方」は大きく変わりました。


変化①:流通は「チェーン最適化」から「消費地最適化」へ

2000年代当時は、

  • コンビニチェーンの本社所在地
  • 物流拠点の管轄
  • 地場スーパーの勢力圏

が、そのまま味の境界線に反映されていました。

しかし2020年代以降、
流通は以下のように変化しています。

  • POSデータによる売上分析の高度化
  • 店舗単位でのSKU最適化
  • 売り場担当者の裁量拡大

結果として、

「県境だから東ではなく、
この店の客層には西が売れる」

という判断が、
以前よりずっと簡単に行われるようになりました。


変化②:「両置き」は例外ではなくなった

あなたの調査でも一部確認されていた
東西両方を並べて売る店舗

2026年現在、これはむしろ増えています。

特に以下の条件が揃うと、両置き率が高くなります。

  • 観光地・サービスエリア
  • 県境都市(名張・伊賀・新宮・米原など)
  • 大型イオン・ショッピングセンター
  • インバウンド需要を意識した売り場

どん兵衛は、
「地元民の主食」であると同時に
「話題性のある日本文化商品」にもなりました。

その結果、

✅ 食べ比べ需要
✅ ネタ目的の購入
✅ SNS投稿用

といった用途を見越した陳列が、
意識的に行われるようになっています。


変化③:もはや「味噌の名古屋」問題だけでは語れない

2006年当時も触れられていたように、
名古屋圏は

  • うどんは薄くない
  • かと言って関東とも違う
  • 味噌文化が強い

という第三極でした。

2026年の視点で見ると、
この「第三極」はさらに細分化しています。

  • 名古屋市中心部
  • 三河方面
  • 尾張北部
  • 伊勢湾岸

それぞれで、
東西どちらが「勝つか」は微妙に異なります。

つまり現在の境界線は、

一本の線
ではなく
まだら模様のグラデーション

になっているのです。


変わらないもの:だし文化そのもの

一方で、
変わっていないものもあります。

それは、
人が「うまい」と感じる基準が
育った土地の記憶に強く依存する、という事実です。

  • 昆布だしで育った舌
  • 鰹だしで育った舌
  • 薄口=薄味ではないという誤解
  • 濃口=しょっぱいでもない誤解

どん兵衛は、その差を

  • 極端に寄せすぎず
  • しかし、誤魔化さない

という絶妙なラインで作り分け続けています。

これが、
50年近くブランドが生き続ける理由でもあります。


2026年現在の見分け方は、いまも有効か?

結論:有効です。

あなたが記した

  • フタや原材料表示の (E)/(W)
  • 粉末スープの色
  • 原材料順の微差

これらは現在も踏襲されています。

つまり、このエントリーは
いま読んでも普通に役に立つという、
非常に珍しい性質を持っています。


そして、この記事の本当の価値

このエントリーが面白い理由は、
どん兵衛そのものではありません。

  • 何を境界線とするか
  • どこで文化が切り替わるか
  • 流通はその文化をどう写すか

という問いを、
あほなことをまじめにやり切っている点です。

スマホで地図を見れば終わる時代に、
実際に走り、見て、確かめた記録。

これはもはや

  • 食文化研究
  • 流通史
  • 民俗学的フィールドワーク

の領域に片足を突っ込んでいます。


おわりに:境界線は変わる。でも、無くならない

技術が進み、物流が変わり、
売り場は柔軟になりました。

それでも、
東日本版と西日本版が統合される日は、まだ見えません。

なぜなら、
「違い」があること自体が、
どん兵衛というブランドの価値だからです。

境界線は、
地図の上では揺らぎながら、
人の舌の記憶の中では、
今もはっきり存在しています。

オリジナル投稿:2022年4月18日

2022年4月9日土曜日

あなたの死後、ブログやSNSはどうなる?|2026年版「デジタル遺品」とアカウントの行方

 原題:あなたの死後、ブログやSNSはどうなりますか?


 生前整理というわけではないですが、わたしが以前利用していたブログのサイトが閉鎖することが決まったということで、なんとかパスワードを思い出し、過去に書いた諸々のブログを消去している最中です。あっ、でも、知識系のモノはこちらに載せ直すかもしれません。

ところで、あなたが突然死した場合、ブログやSNSはどうなるのでしょうか?

サイトが管理不能状態となってずっと残ることになるそうですが、今回のわたしの事例のようにそのサイトそのものが消滅するなら問題はないですが、FacebookやTwitter、Instagramのようにいまやなくてはならない存在になってしまったものについては困ってしまいますね。

そこで、一番良いとされている方法が、「家族に託す」ことだそうです。仮に突然死した場合、一般的には警察から家族に連絡がいくので、訃報を真っ先に受け取ります。なので、「自分が死んだら消しておいて」「ネット上の知り合いのために、●●というメッセージを打っておいて」などと託すのがよいそうです。

・・・・・・

こちらのブログはともかく、先述のブログは内容的に家族に知られるなんて、できねぇw


【2026年4月加筆】

[Updated Spr 2026]


2026年版:あなたの死後、ブログやSNSは“どう残り、どう消える”のか?

――「家族に託す」だけでは足りない“デジタル終活”の現実

元記事で触れていた「突然死したらブログやSNSはどうなる?」という問いは、2026年の今、さらに切実になっています。理由はシンプルで、私たちの生活が “アカウント前提” になったから。写真も連絡先も、支払いも、仕事の履歴も、趣味の人間関係すら、アプリとクラウドに吸い込まれている。

そしてもう一つ、重要な変化があります。
「放っておいても残る」どころか、放っておくと消えることが増えました。特にGoogleは、一定期間使われない個人アカウントを削除し得る方針を明確化しており、最短で“2年”がひとつの基準になっています。

つまり――

  • 「死後に残って困る」問題と同時に
  • 「残しておきたいのに、消えてしまう」問題も同時に起きる

ここが2022年当時と決定的に違う点です。


1) まず結論:死後のSNSは「家族がログインして消す」は基本できない

多くの人が最初に考えるのが「家族がログインして消せばいい」ですが、主要プラットフォームは原則として**“なりすましログイン”を認めない**方向が強いです。特にX(旧Twitter)は、遺族でもアカウントへのアクセス提供はせず、**書類提出による“アカウント停止(deactivate)申請”**が基本線です。 

Facebook/Instagram(Meta)も同様で、遺族がログインして運用を引き継ぐより、

  • **追悼アカウント(memorialization)**にする
  • 削除申請をする
    の二択に近い考え方です。

この現実を踏まえると、「家族に託す」の中身は、単に“お願い”ではなく、

  • どのサービスを残す/消すかの方針
  • 申請に必要な情報(URL、ユーザー名、本人確認に使える情報)
  • 端末ロック解除の手がかり

まで落とし込む必要があります。


2) 2026年の“正解ムーブ”は、各社公式の「死後引き継ぎ機能」を先に設定すること

● Google:アカウント無効化管理ツール(Inactive Account Manager)

Googleには、一定期間あなたが活動しなかった場合に、指定した相手へデータ共有や通知を行う仕組みがあります。
しかもGoogleは、個人アカウントについて「2年間の非アクティブ」で削除し得る方針も明示しているため、**設定していないと“消される側のリスク”**が現実になります。

ここで重要なのは、Googleの仕組みは「遺族が事後的に交渉して何とかする」より、本人が生前に設定しておくことを前提に作られている点です。

Blogger(ブログ)、Gmail、Googleフォト、Drive…
“あなたの人生のログ”がGoogleに寄っている人ほど必須。


● Apple:レガシーコンタクト(Legacy Contact)

iPhoneユーザーの場合は、AppleのLegacy Contactがかなり強力です。
死亡後、指定した相手が「アクセスキー」と「死亡の証明書類」を用いて、写真・メモ・バックアップ等へのアクセス申請ができる仕組みです。

さらに日本では、国や地域により書類要件が異なる場合があり、日本では死亡証明書の代わりに戸籍等が必要となるケースがあることもApple自身が言及しています。 

これ、家族側の負担を想像すると強烈で、
「自分が死んだらお願い」だけだと、遺族は “手続き地獄” に入りやすい。
だからこそ、設定+アクセスキーの保管場所まで含めて“設計”しておくのが現代的な終活になります。


● Facebook/Instagram:追悼アカウント/削除+「レガシーコンタクト」

Metaの基本は「追悼として残す」か「削除する」か。
そして“レガシーコンタクト”は、ログイン権限ではなく、追悼アカウントの限定的管理者という立ち位置です。 

つまり、
「家族に託せば中身を全部見て整理してくれる」は幻想。
DMや非公開メッセージは基本読めない、と理解した上で設計するのが安全です。


● X(旧Twitter):追悼機能がない=“消す”か“放置”の二択になりがち

XはFacebookのような追悼状態を用意していない(少なくとも公に整備された仕組みとしては弱い)ため、死後は「停止申請」へ寄りやすいです。

ここでポイントは、
Xは“アカウントアクセスを遺族に渡さない”スタンスが明確で、必要書類を出してアカウント停止(deactivate)へ、という流れ。 


3) 一番ヤバいのは「SNS」より「見えない契約」――サブスクと決済

元記事では「サイトが消滅するなら問題ない」とありましたが、2026年の現実はむしろ逆で、**消えないのは契約(課金)**です。

国民生活センターは、デジタル遺品の相談として

  • サブスクの請求を止めたいのにID/パスワード不明
  • スマホが開けずネット銀行の契約先が分からない
    といったケースを明示し、“見えない契約”が遺族を詰ませることを注意喚起しています。 

そして厄介なのは、第三者がロック解除するのは困難で、放置すると請求が続くことがある点。

つまり、デジタル終活の主戦場は「SNSの削除」よりも、

  • 端末ロック解除
  • 決済(クレカ・キャリア決済・コード決済)
  • サブスク一覧
  • 銀行・証券・暗号資産
  • メール(本人確認の基点)

に移っています。


4) 2026年版:デジタル終活の“実務チェックリスト”(これだけやれば家族が助かる)

ここからは、明日からできる“設計図”です。
ポイントは「家族に見せたくない」気持ちも尊重しつつ、遺族が詰まない最低限に落とすこと。

(A)最低限の3点セット

  1. スマホのロック解除方法(パスコードのありか/解除の手がかり)
  2. メインメール(Gmail等)への引き継ぎ設計(Googleの無効化管理ツール等) 
  3. サブスク・決済の棚卸し(クレカ明細/キャリア明細で洗い出し)

国民生活センターも、遺族が困らないために
「ロック解除」「サービス名・ID・パスワード整理」「エンディングノート活用」
などを具体策として挙げています。


(B)“見られたくない”問題の現実的な落としどころ

元記事のオチは最高でした。
「内容的に家族に知られるなんて、できねぇw」

これ、ほとんどの人が本音です。
だから解決策は「全部を見せる」ではなく、

  • “見る権限”と“消す権限”を分ける
  • 残すもの/消すものの方針だけ渡す
  • パスワードそのものは渡さず、アクセス手段だけ残す

という設計にする。

具体的には、

  • Googleは「無効化管理ツール」で“渡すデータを選ぶ” 
  • Appleは「Legacy Contact」で“アクセス範囲に制限がある(iCloudキーチェーン等は対象外)” 
  • Facebookは“レガシーコンタクトでもログインはできない” 

といった“公式の制限”を逆手に取ると、「全部見られる恐怖」を減らせます。


(C)家族に渡すメモは「1枚」でいい(長文は読まれない)

おすすめは、A4 1枚の「デジタル遺品カード」。

  • スマホロック解除のヒント(直接の数字でなく、保管場所の案内)
  • 主要アカウント(Google/Apple/LINE/銀行)の“存在”
  • 「残す/消す」の方針
  • 連絡してほしい相手(ネット上の知人がいるなら、伝言の宛先)
  • 重要書類の置き場所(戸籍、身分証、契約情報)

これで遺族の負担が激減します。


5) 「ブログ」はどうなる?――残すなら“消えない設計”も必要

2022年の記事では「サイトが閉鎖するなら問題ない」とありましたが、
知識系記事を載せ直すなら、逆に「消えない設計」も大事です。

  • 独自ドメインを使う(移転可能性が上がる)
  • 定期的にバックアップ(HTML/PDF化、エクスポート)
  • Googleアカウント削除リスクを考慮(2年非アクティブで削除され得る)

「自分が死んだ後のため」だけでなく、
「自分が忙しくて放置したとき」でも消える可能性がある。
これが2026年のリアルです。


まとめ:デジタル終活は「家族への愛」と「自分の秘密」の両立ゲーム

ここまでの話を、乱暴に一行でまとめるならこうです。

デジタル終活=“遺族が詰まない”と“自分の秘密が守られる”を同時に満たす設計

そして、そのために使える“公式ツール”は揃ってきました。

  • Google:無効化管理ツール(データの渡し方を選べる) 
  • Apple:Legacy Contact(死後のiCloudアクセスを制度化) 
  • Meta:追悼アカウント+レガシーコンタクト(ログインではなく限定管理) 
  • X:書類提出で停止申請(追悼機能は薄い) 
  • 国民生活センター:デジタル終活の必要性を公的に注意喚起(ロック解除・契約整理・エンディングノート) 

最後に一つだけ。
デジタル終活は「縁起でもない話」ではなく、家族の事務負担と精神負担を減らす“思いやりの実務”**です。
そして、“家族に見せられない何か”がある人ほど、早めに設計しておいたほうがいい。
……なぜなら、遺族はあなたの死後、あなたのスマホの前で詰むからです。

(そして、詰んだ結果、結局“全部見られる”可能性が上がる。これが一番怖い。)


オリジナル投稿:2022年4月9日

2022年4月2日土曜日

インフルエンザはどこへ消えたのか?白い流行マップが示した異常と、その後に起きた現実

 原題:インフルエンザはどこへ消えた? 2021/22シーズンインフルエンザ流行マップ



チーズどころの騒ぎではない

国立感染症研究所(NIID:National Institute of Infectious Diseases)は、インフルエンザ流行マップというインフルエンザがどれだけ流行しているかを都道府県別に色分けして見た目で流行具合が分かるように発表しています。

この冬、2021/22シーズンのインフルエンザ流行マップも発表されているのですが・・・・・・白い

新型コロナウイルスは2019年から世界各地に流行しだしましたが、2019/20シーズンのインフルエンザ流行マップ(国立感染症研究所感染症情報センター  2019/2020シーズン)を見てみると、9月中旬ごろから発生、12月下旬から1月下旬にかけて感染者数が増加し、以降収束の傾向を見せています。

一方で、2020/21シーズンのインフルエンザ流行マップ(2020/21シーズン)及び2021/2022シーズンの流行マップ(2021/2022シーズン)を見ると、明らかに白い=過去の患者発生状況を基に設けられた基準値を超えた場合に発せられる注意報や警報が発せられていないことが分かります。それに、2019/20シーズンまでは遅くとも11月からは流行マップが掲載されているのに対し、2020/21及び2021/2022シーズンは1月から。この点でも違いがあります。

累積推計受信者数でいくと2020年第36週~2021年第17週で約1.4万人、前シーズン(2019年~2020年)同時期は728.9万
人、前々シーズン(2018年~2019年)同時期は1,200.5万人なので、文字通り桁違いに少ないのです。

参考:インフル、異例の低水準 2季連続、コロナ対策奏功か―増加の感染症も、専門家警戒:時事ドットコム (jiji.com)


新型コロナウイルスの感染症対策であるマスク・手洗い・3密回避が、そのままほかの上気道感染症を劇的に減らすことに繋がっています。

それにもかかわらず感染者数が増える新型コロナウイルスは、いかに感染力が強いのかということでもありますが。


【2026年4月加筆】
[Updated Spr 2026]


インフルエンザは「消えた」のではなかった——白い流行マップの、その後

2021/22シーズンのインフルエンザ流行マップが、
まるで何も起きていないかのように「白一色」だったことは、
当時多くの人に強い違和感を与えました。

インフルエンザは、毎年必ず冬に流行する「季節の風物詩」のように扱われてきました。
それが突然、ほぼ消滅したように見えた。
この異常事態は、単なる一過性の現象だったのでしょうか。

結論から言えば、
インフルエンザは消えたのではなく、抑え込まれていただけでした。
そして2026年現在、その反動は、はっきりと表面化しています。


コロナ対策が「他の感染症」を消した理由

元記事が指摘している通り、
2020/21・2021/22シーズンにインフルエンザが激減した最大の理由は、
新型コロナウイルス対策そのものです。

  • マスク着用の常態化
  • 手洗い・消毒の徹底
  • 人流の抑制
  • 学校・職場での集団行動の変化

インフルエンザは、
飛沫・接触を主な感染経路とする上気道感染症です。
つまり、人と人が接触しなければ、驚くほど広がらない

一方で、
同じ環境下でも新型コロナウイルスだけは拡大を続けました。
これは、感染力・潜伏期間・無症状感染の多さという点で、
従来のインフルエンザとはまったく異なる性質を持っていたからです。


「流行しなかった」ことの副作用——免疫負債

しかし、感染症が流行しなかったことは、
必ずしも良いことばかりではありませんでした。

2023年以降、専門家の間で繰り返し使われるようになった言葉があります。
**免疫負債(Immunity Debt)**です。

これは、

  • 本来なら自然感染や軽症感染で獲得されていた免疫が
  • 数年間ほぼ更新されなかった結果
  • 社会全体の免疫レベルが下がる

という現象を指します。

特に影響を受けたのが、

  • 乳幼児
  • 学童期の子ども
  • 若年層

でした。
「インフルエンザにかかったことがない世代」が、
複数年分まとめて誕生したのです。


2023年以降、何が起きたのか

2023/24シーズン以降、
日本でも世界でも、インフルエンザは再び流行し始めました。

しかも、その特徴は従来と異なります。

  • 流行開始が早い
  • 夏場にも散発的に発生
  • 複数の型が同時に流行
  • 重症化リスクが一部年齢層で上昇

これは、
「いつものインフルエンザが戻った」というより、
ブランクを経て、違う形で再登場したと言った方が近い状況です。

2021/22シーズンの“白いマップ”は、
静寂ではなく、嵐の前の空白だったのかもしれません。


なぜ流行マップは「白く見えた」のか

もう一つ重要なのは、
あの流行マップが「現実そのもの」ではなく、
観測されたデータの可視化にすぎない点です。

  • 医療機関の受診行動の変化
  • 発熱=即コロナ検査という流れ
  • インフル検査自体が行われなかったケース
  • 発生しても報告に乗らなかった軽症例

つまり、

流行していなかった
ではなく
流行として「検出されなかった」

側面も否定できません。

数字は常に、
「起きた現象」ではなく
「測定された現象」を示している、という基本が
ここでも当てはまります。


「マスクを外した社会」で起きていること

2026年現在、
マスク着用は個人判断となり、
行動制限もほぼなくなりました。

その結果、

  • インフルエンザ
  • RSウイルス
  • 咽頭結膜熱
  • 百日咳

といった感染症が、
同時多発的に流行する年が増えています。

これは、
コロナ前に戻ったのではありません。

コロナを経た後の、別のフェーズに入った
と考える方が現実的です。


インフルエンザは「弱い病気」ではない

インフルエンザはしばしば、

  • ただの風邪
  • 毎年かかるもの
  • 休めば治る

と軽視されがちです。

しかし、
流行がなかった数年間を挟んだことで、
改めて次の事実が浮き彫りになりました。

  • 高齢者にとっては致命的になり得る
  • 基礎疾患との相互作用
  • 医療逼迫の引き金になる
  • 社会機能を一気に止める力を持つ

「流行しなかった」ことで、
その存在感が薄れただけで、
危険性が下がったわけではありません。


白いマップが教えてくれたもの

2021/22シーズンの白い流行マップは、
結果として、非常に貴重な教材になりました。

それは、

  • 人の行動が感染症をどれほど左右するか
  • 社会的対策が、数字をどう変えるか
  • データは文脈なしでは読めないこと
  • 「異常値」こそが、構造を浮かび上がらせること

を、誰の目にも分かる形で示したからです。


「次に備える」という視点

インフルエンザは、
これからも消えることはありません。

むしろ、

  • コロナとの同時流行
  • 新型インフルエンザ出現の可能性
  • ワクチン接種率の低下
  • 個人判断に委ねられた感染対策

といった要因により、
不確実性は以前より高まっています

だからこそ、
白いマップを「過去の珍事」として忘れるのではなく、
「何が起きれば、何が変わるのか」を学ぶ材料として
記憶しておく意味があります。


インフルエンザは、どこへ消えたのか

答えは、
どこへも消えていなかった

私たちの行動の変化によって、
一時的に姿を潜めていただけです。

そして今、
その空白期間を経た世界で、
インフルエンザは再び「別の顔」で存在感を示しています。

白い流行マップは、
終わりではなく、
次の章の始まりだったのです。

オリジナル投稿:2022年4月2日

2022年4月1日金曜日

私は嘘つきです——自己言及のパラドックスが、嘘を許さなくなった社会を映し出す

原題: 「私は嘘つきです」 自己言及のパラドックス

嘘 大げさ まぎらわしい 

って、JAROってなんじゃろ?ですね。今回、JAROは関係ありませんが。

さて、タイトルに書いた文章は『自己言及のパラドックス』又は『嘘つきのパラドックス』と呼ばれるもので、簡単なこの文章は矛盾が生じています。 

仮に、私が嘘つきである場合、「私は嘘つきです」と正しいことを言ったことになり、嘘つきではなくなってしまうのでNG 

逆に、私が嘘つきでない場合、「私は嘘つきです」と嘘を言ったことになり、嘘つきになってしまうのでNG 

というように、文章が成立しなくなってしまうのです。 

ただ、この人が正直者であるならば、今日だけはこの文章は成立するのではないでしょうか? 

私が嘘つきである場合、嘘を言ったわけではないのでNG

私が正直者である場合、嘘を言ったけどエイプリルフールなのでOK


【2026年4月加筆】
[Updated Spr 2026]

追加パート

「私は嘘つきです」から先へ —— なぜ私たちは“矛盾”を面白がれなくなったのか

「私は嘘つきです」という一文は、読む者にちょっとした引っかかりを残します。
理屈として分かっていても、頭のどこかがムズムズする。
このムズムズこそが、いわば思考が自分自身を振り返ろうとする瞬間です。

しかし、ここ数年――いや、ここ十数年で、私たちはこのムズムズを意識的に避けるようになってはいないでしょうか


自己言及が壊れる社会

自己言及のパラドックスは、単なる言葉遊びや論理パズルではありません。
本質は「自分の立っている場所を、自分自身で説明しようとすることの不安定さ」にあります。

ところが2020年代後半の社会は、
この「自分で自分を疑う」という営みを、極端に嫌う構造へと進んでいます。

  • プロフィール欄には、分かりやすい肩書き
  • SNSでは、一貫したスタンス
  • 発言は「誤解を招かないか」より「炎上しないか」
  • 曖昧さや冗談は、注意書きがないと通用しない

結果として、「私は嘘つきです」のような文章は、
矛盾しているから面白いのではなく、
どちらが正しいのか決められないから不安なものになってしまいました。


エイプリルフールが成立しなくなった理由

原文でも触れられている通り、
この文章は「エイプリルフール」という前提を置くと、少しだけ成立する余地が生まれます。

しかし近年、エイプリルフールそのものが
公式が嘘をつく危険日」と見なされるようになりました。

  • 企業のエイプリルフール企画が炎上
  • 「冗談だと分かりづらい」という批判
  • 真偽不明情報(フェイクニュース)との区別がつかない

ここで起きているのは、
嘘がいけないのではなく、「嘘と本当の境界で遊ぶ」余裕が失われたという変化です。

「今日は嘘をついていい日」という
共通の了解そのものが、成立しなくなった。


AIの登場で、自己言及はさらに複雑になった

2026年現在、私たちはAIと日常的に会話しています。
ここで、自己言及の問題は新しい段階に入っています。

たとえば、

  • AIが「私は間違えることがあります」と述べるとき
  • AIが「私はAIです」と説明するとき
  • 人間が「これはAIが書いた文章だ」と注釈を入れるとき

これらはすべて、自己言及を含んだ文章です。

しかもAIは、「嘘をつく」という概念を人間のようには持っていません。
正確には、

  • 意図がない
  • 意識がない
  • それでも誤りは出力する

という、嘘でも真実でもない中間地帯に存在しています。

結果として、
「誰が言ったのか」「それは分かって言っているのか」という前提が、
ますます重要になりました。


「正しさ」から逃げられない時代

かつての「私は嘘つきです」は、
正しさを決められないこと自体を楽しむ余白がありました。

しかし今は違います。

  • どちらが正しいのか
  • 誤解を招かないか
  • デマに加担していないか
  • 責任の所在はどこか

すべてが即座に問われる。

その結果、
「矛盾したまま置いておく」
「決着をつけずに考え続ける」
という態度が、無責任と混同されやすくなったのです。


それでも、人間は自己言及をやめられない

それでも――
人間は、自己言及をやめることができません。

  • 「こんなことを書く自分って何なんだろう」
  • 「今こう感じている私は、本当に本心なのか」
  • 「この投稿は、誰に向けて書いているのか」

ブログを書く行為そのものが、
すでに一種の自己言及です。

「私は嘘つきです」という一文は、
世界に向かって投げた問いであると同時に、
自分自身への問いでもあります。


嘘を許せない社会で、問いを投げ続けるということ

現代社会では、
「嘘をつくな」
「誤解を与えるな」
「責任を持て」
という圧力が、以前よりもずっと強くなっています。

それ自体は間違いではありません。

しかし同時に、
「矛盾を含んだまま考え続ける力」
「答えが出ない問いと一緒にいられる力」
も、置き去りにされつつあります。

「私は嘘つきです」という文章が、
いま読み返すと少し居心地が悪いのは、
私たち自身が、曖昧さに耐えられなくなっている証拠なのかもしれません。


今日だけは、成立しなくてもいい

結局のところ、この文章は本当の意味では成立しません。
エイプリルフールであっても、論理的には解決しない。

でも、それでいい。

成立しないからこそ、
「なぜ成立しないのか」を考える。

その時間そのものが、
情報過多で結論を急がされる時代において、
少しだけ人間らしい営みなのだと思います。

「私は嘘つきです」と書いてみる。
それに引っかかる。
引っかかったまま、少し考える。

――それだけで、今日はもう十分なのかもしれません。


オリジナル投稿:2022年4月1日