2026年10月9日金曜日

【実質賃金は本当に増えた?】8カ月連続プラスでも生活が苦しい理由とは?手取り・物価・税負担の真実を徹底解説


2026年、日本経済に関するニュースで頻繁に目にする言葉があります。

それが「実質賃金8カ月連続プラス」です。

ニュースだけを見ると、

「給料が物価上昇を上回った」

「日本人の生活は改善している」

「景気回復が始まった」

という明るい印象を受けるかもしれません。

しかし実際には、多くの人がこう感じています。

「スーパーの買い物は毎月高くなっている」

「手取りは全然増えていない」

「生活が楽になった実感はない」

なぜ統計では実質賃金が上がっているのに、多くの国民は豊かさを感じられないのでしょうか。

その理由は、実質賃金という指標の仕組みと、日本経済が抱える構造的な問題にあります。

本記事では、実質賃金の意味から生活実感とのズレ、今後の日本経済の見通しまで詳しく解説します。


実質賃金とは何か

まず実質賃金の基本を理解しておきましょう。

実質賃金とは、

「賃金の増加率から物価上昇率を差し引いたもの」

です。

例えば、

  • 給料が4%上昇した
  • 物価が2%上昇した

場合、実質的な購買力は約2%増えたことになります。

つまり実質賃金は、

「給料でどれだけ物やサービスを買えるか」

を示す指標なのです。

そのため経済学では非常に重要な指標として扱われています。


名目賃金と実質賃金の違い

混同されやすいのが名目賃金との違いです。

名目賃金

給与明細に書かれている額面金額です。

企業が支払う賃金そのものを指します。

実質賃金

名目賃金から物価上昇の影響を差し引いたものです。

同じ100万円でも、

  • 物価が安い時代の100万円
  • 物価が高い時代の100万円

では価値が異なります。

その違いを反映したものが実質賃金です。


なぜ実質賃金は8カ月連続プラスなのか

春闘賃上げの効果

近年、大企業を中心に高水準の賃上げが実施されました。

人手不足が深刻化しているためです。

企業は優秀な人材を確保するため、

  • 基本給引き上げ
  • 初任給引き上げ
  • ベースアップ

を実施しました。

その結果、名目賃金は大きく上昇しています。

物価上昇率が落ち着いた

同時に物価上昇率も以前より鈍化しています。

政府による、

  • ガソリン補助金
  • 電気・ガス補助金

なども影響しました。

その結果、

賃金上昇率 > 物価上昇率

となり、実質賃金がプラスになっているのです。


それなのに生活が苦しい理由

ここが多くの人が感じている最大の疑問です。

理由① 手取りが増えていない

実質賃金は税金や社会保険料を考慮していません。

しかし実際の生活で重要なのは手取りです。

給与が増えると、

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料

も増加します。

その結果、

「額面は増えたが手取りはほとんど変わらない」

という状態が発生します。

理由② 食品価格の体感上昇率が高い

統計上の物価上昇率は2〜3%でも、

  • 米
  • 野菜
  • パン
  • 菓子
  • 外食

などは大幅に値上がりしています。

人は毎日買う商品ほど値上がりを強く感じます。

そのため統計以上に生活が苦しく感じられるのです。

理由③ 光熱費や保険料も上昇

家計には食品以外の負担もあります。

  • 火災保険
  • 自動車保険
  • 住宅関連費
  • 教育費
  • 介護費用

なども上昇しています。

賃金上昇の恩恵が相殺されている家庭は少なくありません。


実質賃金と生活実感がズレる理由

平均値の落とし穴

実質賃金は平均値です。

しかし全員が同じ割合で賃上げされているわけではありません。

例えば、

  • 大企業は5%賃上げ
  • 中小企業は1%賃上げ
  • 賃上げゼロの企業もある

状態でも平均値は上昇します。

そのため、

「統計では上がっているのに、自分は変わらない」

という人が多数存在するのです。

地域格差も大きい

東京や大都市圏では賃上げが進んでいます。

しかし地方では依然として厳しい企業も多く、

  • 人手不足
  • 価格転嫁困難
  • 利益圧迫

に苦しんでいます。

全国平均だけでは実態を把握できません。


中小企業が抱える深刻な問題

日本企業の約99%は中小企業です。

実質賃金改善の最大の課題もここにあります。

賃上げしたくてもできない

中小企業は、

  • 原材料高
  • エネルギー高
  • 人件費高
  • 社会保険料負担増

に苦しんでいます。

さらに大企業からの価格引き下げ要求もあります。

結果として賃上げ余力が生まれにくい状況です。

賃上げ倒産も増加

近年は人材確保のため無理に賃上げを行い、

利益が確保できず倒産する企業も増えています。

これが現在の日本経済の難しいところです。


本当に見るべきは「可処分所得」

生活実感に最も近い指標は実質賃金ではありません。

それは可処分所得です。

可処分所得とは

可処分所得とは、

給与 − 税金 − 社会保険料

で計算される自由に使えるお金です。

つまり本当に重要なのは、

「給料が上がったか」

ではなく、

「自由に使えるお金が増えたか」

なのです。

今後は可処分所得にも注目する必要があります。


今後の実質賃金はどうなるのか

プラス継続は簡単ではない

実質賃金プラスが続いているのは良いニュースです。

しかし今後は、

  • 補助金縮小
  • 食料品値上げ
  • エネルギー価格上昇
  • 企業収益悪化

などのリスクがあります。

楽観視はできません。

重要なのは賃上げの定着

一時的な賃上げではなく、

  • 生産性向上
  • 設備投資
  • 人材育成
  • 価格転嫁

によって持続的な賃上げを実現できるかが重要になります。


投資家が注目すべきポイント

内需関連企業

実質賃金が安定的に増加すれば、

  • 外食
  • 小売
  • 旅行
  • レジャー

などの内需産業が恩恵を受けます。

人材関連企業

賃上げ競争が激化すれば、

  • 人材紹介
  • 転職サービス
  • 人材派遣

への需要も高まるでしょう。


まとめ

実質賃金が8カ月連続でプラスとなったことは、日本経済にとって前向きな材料です。

しかし、

  • 税金の増加
  • 社会保険料の増加
  • 食品価格上昇
  • 中小企業の賃上げ不足

によって、多くの人は生活改善を実感できていません。

今後重要なのは、

「実質賃金」ではなく「手取り」と「可処分所得」が増えることです。

数字が改善するだけでは十分ではありません。

国民が実際にスーパーでの買い物や日常生活の中で、

「少し楽になった」

と感じられる状態になって初めて、本当の意味で景気回復と言えるでしょう。


著者プロフィール

仮面サラリーマン

上場企業勤務の現役会社員投資家・経済ブロガー。

日本経済、雇用統計、賃金動向、AI、半導体、日本株・米国株を中心に分析・情報発信を行う。

経済統計をデータから読み解き、「なぜ起きているのか」「今後どうなるのか」をわかりやすく解説することをモットーとしている。

運営ブログ: 「日本と世界の今がわかる ニュース解説ブログ」

専門分野:日本経済、雇用統計、マクロ経済分析、投資戦略、AI、半導体

世界秩序の変化に関する図解

written by 仮面サラリーマン