あなたならどうするでしょうか。
見て見ぬふりをするのか、それとも勇気を出して内部通報するのか。
企業のコンプライアンス経営が重視される時代となった現在、多くの会社が内部通報制度を導入しています。しかし現実には、内部通報を行った従業員が報復人事や左遷、パワハラを受けたと訴えるケースが後を絶ちません。
制度上は守られるはずの内部通報者が、なぜ職場で孤立し、苦しめられるのでしょうか。
本記事では、内部通報制度の現実、報復が起きる理由、日本企業特有の組織文化、そして内部通報者を守るために必要な改善策について詳しく解説します。
内部通報制度とは何のために存在するのか
内部通報制度とは、企業内で法令違反や不正行為、ハラスメントなどを発見した従業員が、それらを通報できる仕組みです。
本来の目的は企業を守ることにあります。
多くの人は内部通報制度を「従業員を守る制度」だと思っていますが、本質的には違います。
内部通報制度は企業が大きな不祥事を起こす前に問題を発見し、改善するための仕組みです。
例えば、
- 粉飾決算
- 横領
- 架空取引
- 顧客情報漏洩
- パワハラやセクハラ
- 安全基準違反
などを早期発見できれば、企業は巨大な損失を避けられます。
つまり内部通報者は本来、企業を危機から救う存在であるはずなのです。
それでも内部通報者が嫌われる理由
しかし現実の企業では、内部通報者が歓迎されるとは限りません。
むしろ逆の場合が少なくありません。
問題を起こした人より問題を表面化した人が嫌われる
組織には現状維持を好む性質があります。
不正行為が存在していても、それが表面化していなければ組織にとっては「存在しない問題」として扱われます。
ところが内部通報によって問題が発覚すると、
- 管理責任の追及
- 上司の評価低下
- 顧客への説明
- 監督官庁への報告
- 株主からの批判
が発生します。
その結果、不正をした本人ではなく、問題を表面化させた内部通報者に不満が向けられる場合があります。
これは非常に理不尽ですが、多くの組織で見られる現象です。
なぜ日本企業では内部通報者が孤立しやすいのか
同調圧力の強い組織文化
日本企業の特徴として挙げられるのが同調圧力です。
組織の和を重視する文化は優れた面もあります。
一方で、
- 空気を読む
- 波風を立てない
- 前例に従う
- 上司に逆らわない
という価値観が優先されることがあります。
そのため内部通報者は、
「正しいことをした人」
ではなく、
「組織の和を乱した人」
と見られるケースがあります。
前例主義が問題を長期化させる
職場には不思議な現象があります。
最初は疑問を感じていた人でも、時間が経過するとその状況を当たり前だと感じてしまうのです。
例えば、
- 明らかに仕事を与えられていない社員
- 会議に呼ばれない社員
- 窓際部署へ異動した社員
- 孤立した席に配置された社員
がいても、周囲は次第に違和感を持たなくなります。
こうして不適切な状態が何年も継続するケースがあります。
内部通報後によく起きる報復行為
配置転換と左遷
最も多いのが人事異動です。
会社側は業務上の必要性を理由に説明しますが、
- 遠方への転勤
- 閑職への異動
- 責任ある仕事の剥奪
- 昇進停止
などが実質的な報復として行われる場合があります。
評価の引き下げ
突然過去の評価が見直されるケースもあります。
これまで高評価だった社員が内部通報後に急激に低評価になると、客観的な妥当性が問題視されることがあります。
孤立化
もっとも精神的ダメージが大きいのが孤立です。
明確な処分ではないため証明が難しい一方で、
- 必要な情報が共有されない
- 会議から外される
- 雑談の輪に入れない
- 相談相手がいなくなる
といった状況は非常に深刻です。
人間は社会的な生き物です。
職場で完全に孤立した状態は想像以上のストレスになります。
内部通報制度は本当に機能しているのか
現在、多くの大企業が内部通報窓口を設置しています。
しかし制度が存在することと、制度が機能することは別問題です。
通報窓口が機能しない理由
- 経営陣の意向が強い
- 調査担当者に独立性がない
- 組織防衛が優先される
- 通報者保護が不十分
これらの問題があると、内部通報制度は単なる形式的な仕組みになってしまいます。
従業員もそのことを理解しているため、
「どうせ何も変わらない」
と考えて通報を諦めるのです。
なぜ多くの人が泣き寝入りするのか
内部通報後に不利益を受けても、多くの人は裁判を起こしません。
その理由は明確です。
- 訴訟に時間がかかる
- 弁護士費用が高い
- 精神的負担が大きい
- 職場復帰が難しい
- 転職活動にも影響する
企業と個人では資金力も人的資源も大きく異なります。
そのため多くの人は戦うことを諦め、退職という選択肢を選んでしまいます。
海外ではなぜ内部通報者が守られるのか
欧米諸国では内部通報者保護が日本より強化されているケースがあります。
特に企業側の悪質な報復に対しては巨額賠償が命じられることもあります。
企業にとって、
「報復した方が得」
という状況にならないような制度設計が重視されているのです。
一方、日本では慰謝料水準が比較的低く、企業側の抑止力として十分なのか議論が続いています。
本当に強い会社は内部通報を歓迎する
優れた企業ほど内部通報を歓迎します。
なぜなら問題が表面化することで改善できるからです。
一時的には痛みを伴っても、
- 企業価値向上
- 不祥事防止
- 顧客信頼向上
- 社員満足度向上
につながります。
内部通報者を排除する企業は、自ら改善の機会を失っているとも言えるでしょう。
まとめ|内部通報者が守られなければ組織は腐敗する
内部通報制度は企業不正を防ぐための重要な仕組みです。
しかし現実には、
- 報復人事
- 左遷
- パワハラ
- 孤立化
- 退職圧力
などの問題が存在します。
内部通報者が安心して声を上げられない組織では、不正は水面下で拡大し続けます。
逆に言えば、内部通報者を守れる企業こそが本当に健全な企業です。
日本企業が今後持続的に成長していくためには、
「不正を隠す文化」から「問題を改善する文化」への転換が不可欠なのではないでしょうか。
著者プロフィール
仮面サラリーマン
大手メーカー勤務の現役サラリーマン。投資歴20年以上。
経済、企業分析、労働問題、コンプライアンス、AI、世界情勢などを中心に分析しています。
ブログ「日本と世界の今がわかるニュース解説ブログ」を運営し、ニュースの背景や企業不祥事の本質を分かりやすく解説しています。
モットーは「感情ではなく事実とデータで考える」です。
written by 仮面サラリーマン
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