「クラウドワークスが95%減益」「AIに仕事を奪われた」「ライターが悲鳴」――2026年2月、この話題がSNSや掲示板で一気に拡散しました。
ただし、結論から言えば「95%減益=AIのせいで仕事が消えて会社が崩壊した」と断定するのは早計です。
なぜなら、決算数字を冷静に読むと、売上は大崩れしておらず、利益の急減は採用・投資・一時費用などコスト面の影響が大きい構図が見えるからです。
一方で、現場(ワーカー側)では「案件が消えた」「単価が崩れた」という実感が強く、そこに“真実”があるのも事実。
本記事では、決算の真相(数字)と現場の真相(仕事)を分けて整理し、「AI時代に残る仕事・消える仕事」まで見通します。
なぜ「AIが仕事を奪った」という話が拡散したのか
X(旧Twitter)で広がった「AI敗北論」の構図
発端は、クラウドワークスが発表した2026年9月期 第1四半期(2025年10〜12月)の決算で、利益指標が大きく落ち込んだことでした。
特にSNSで切り取られやすかったのが、以下の“インパクトが強い数字”です。
- 営業利益:5,400万円(前年同期比 -84.4%)
- 四半期純利益:700万円(同 -95.6%)
この数字だけを見ると「ビジネスが崩れた」と感じやすく、「AIが仕事を奪った」「プラットフォームが崩壊した」というストーリーが一気に広がりました。
95%減益という数字が与えたインパクト
ただ、利益は売上(トップライン)×粗利×コストで決まります。つまり、利益が減ったからといって必ずしも「仕事(売上)が消えた」とは限りません。
実際、掲示板でも「売上は落ちていない」「決算を読め」という趣旨の反論が複数出ており、議論は“AI要因”だけでは説明できない雰囲気になっていました。
クラウドワークスの決算を冷静に読み解く
売上はほぼ横ばい、それでも利益が崩れた理由
まず押さえるべきは、決算短信に記載された売上(トップライン)がほぼ横ばいという事実です。
- 売上高:55.60億円(前年同期比 -1.0%)
- 売上総利益:22.94億円(同 -3.9%)
- 営業利益:0.54億円(同 -84.4%)
- 経常利益:0.74億円(同 -78.7%)
- 四半期純利益:0.07億円(同 -95.6%)
つまり、「AIのせいで仕事が消えた→売上が崩れた→利益が消えた」という単純な因果は、少なくともトップラインの数字だけでは支持されにくいのです。
販管費・投資フェーズという「見えにくい要因」
売上が横ばいなのに営業利益が大きく落ちるときは、典型的に販管費(人件費・採用費・開発費・移転費など)が増えているケースが多いです。
実際に、決算要約では、利益減少要因としてDX関連の人材投資やオフィス移転に係る一時費用などが挙げられています。
「AIに仕事を奪われた」と断定できない根拠
このように、売上が大幅に落ちたわけではないため、「仕事が消えて利益が消えた」というよりも、まずは“利益を削って投資している(またはコストが増えている)”という読みが自然です。
吉田社長の言い分:「これは『減益』ではなく『屈伸』である」
中長期戦略としての“戦略的赤字”は本当か
cokiの記事によると、クラウドワークスの吉田浩一郎社長は、決算発表同日の発信で、今回の利益減少を中長期成長に向けた「屈伸」と表現しています。
また、決算の読みとしても、売上横ばいのまま利益が落ちている構図は、「需要が蒸発した」より「コストが膨らんだ(投資した)」説明と整合します。
ただし、「屈伸」が本当に“ジャンプの前”なのか、それとも“しゃがんだまま”なのかは、次の四半期以降で判断されます。
見るべきポイントは、投資の結果として(1)高単価領域が伸びるか(2)利益率が回復するか(3)継続受注が積み上がるか。これらが見えなければ「屈伸」はただの比喩で終わります。
現場で起きている現実──仕事を失ったライターたち
「構成と執筆はChatGPTで」発注が当たり前になった現場
一方、現場の声はもっと生々しい。cokiの記事では、クラウドソーシング中心に活動していたライターが、発注者から「構成と執筆はAI、あなたはファクトチェックと違和感修正を」と言われ、単価が大きく落ちたと語った事例が紹介されています。
低単価・ファクトチェック要員化するライター
ここで起きているのは「文章を書く仕事がゼロになった」ではなく、工程が再分解され、単価が付く場所が移動したという変化です。
AIが下書きを高速生成し、人間は最終の責任(チェック)を負う――このモデルでは、下請け的な“書くだけ”は圧縮され、チェック側も価格競争に巻き込まれやすくなります。
AI以前から壊れていたクラウドソーシングの構造
掲示板でも「低単価」「手数料」「悪質クライアント」など、AI以前からの構造問題が多数指摘されていました。
つまり、AIは“原因”であると同時に、すでに歪んでいた市場の弱い部分を一気に露呈させた触媒でもある、という見方ができます。
なぜ「こたつ記事」「作文仕事」から消えていったのか
検索エンジンの変化とAIのダブルパンチ
掲示板では「こたつ記事はAIでもできる」「取材もなくSNSまとめで書いてるだけ」といった批判が繰り返されていました。
この領域は、もともと“検索流入×広告”のモデルで成立してきましたが、AIが「調べて要約」を無料で高速にやるようになれば、相対的価値は下がります。
AIが奪ったのは仕事か、それとも幻想か
結局のところ、AIが奪ったのは「文章」というより、“薄い情報を量産して成立していた収益構造”だったのかもしれません。
AI時代に残る仕事、消える仕事
真っ先に消えた仕事の共通点
先に消えやすいのは、次の特徴を持つ仕事です(掲示板の批判点とも一致します)。
- 一次情報がない(取材・体験・現地がない)
- ネットの寄せ集め・要約・言い換えが中心
- 成果が「文字数」「納品速度」で評価される
- 品質の差別化が難しく価格競争になりやすい
それでもAIに代替されにくい領域とは
逆に、AIに代替されにくいのは、一次情報と編集・合意形成と責任が絡む領域です。
coki記事でも「生き残る道は二つ」として、AIを使い倒して上流へ行くか、AIが行けない現場(一次情報)へ行くか、という二極化が示唆されています。
クラウドワークスは本当に終わったのか
プラットフォームは「仲介業」から脱皮できるのか
少なくとも決算数字だけを見る限り、売上は大崩れしていないため、「即座に終わった」と断言する材料は弱いです。
一方で、利益が急減したのは事実で、会社側の説明(投資・採用・移転など)が“回収できるか”が焦点になります。
次の決算で見るべきポイント
- 売上(トップライン)が維持・成長するか
- 販管費の増加が一過性か、恒常化するか
- 高単価領域の伸びが利益率回復につながるか
- 投資の成果をKPIで説明できるか(受注単価、継続率など)
まとめ:これはAIの勝利か、それとも業界の淘汰か
「AIのせい」にしてはいけない理由
今回の「95%減益」騒動は、AIだけで説明できません。
決算上は、売上はほぼ横ばいで、利益の崩れはコスト(投資・採用・一時費用)の影響が示唆されます。
一方で現場では、低単価・量産型の仕事がAIに置き換わり、工程分解によって単価が圧縮される現象が起きています。
20代・30代が今、目に焼き付けるべき現実
cokiが示す通り、これからは「AIを使って上流へ行く」か、「AIが行けない一次情報の現場へ行く」かに二極化しやすい。
そして「そこそこのスキルで、パソコンの前だけで完結する中間の仕事」は薄くなる――これが、この騒動の本質です。
参考(一次情報リンク)
- クラウドワークス「2026年9月期 第1四半期決算短信(連結)」:日経の適時開示ページ(PDF)[2](https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20260213559329/)
- coki「クラウドワークス95%減益はAIのせい?決算の真相と『仕事が消えた』ライターの悲鳴」[1](https://coki.jp/stakeholder/supplier/69003/)
- Yahoo!ファイナンス(決算要約・注意書きあり)[3](https://finance.yahoo.co.jp/quote/3900.T/financials)