原題:料理は化学です といっても身構える必要はないですが
作ってたのはマフィンで、こういう焼き菓子だと膨らせるのにベーキングパウダーを入れます。
ただ、今回はちょいと特殊なものを試作しており、ベーキングパウダーを使用するけど中身が硬くつまった感じにしました。
わたしが使っているベーキングパウダーの成分を見ると、
・コーンスターチ
・炭酸水素ナトリウム
・焼ミョウバン
・d-酒石酸水素カリウム
・フマル酸1ナトリウム
・ショ糖脂肪酸エステル
が入っています。
① NaHCO3 + HX(酸性剤) → NaX(中性塩) + H2O + CO2↑
② 2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2↑
③ Na2CO3 + HX(酸性剤) → NaX(中性塩) + H2O + CO2↑
さてここで、重曹は重炭酸ソーダを略した言い方で、これは重炭酸ナトリウムのことであり、炭酸水素ナトリウムのことでもあります。はい、ベーキングパウダーに入っているものそのものです。
今回のマフィンの試作で重曹を追加したとき、酸性のベーキングパウダーにアルカリ性の炭酸水素ナトリウムを追加することになり、これは反応式①左側のNaHCO3が増えるので酸性剤との反応を促進させることにつながります。また、焼いてる最中の反応式②自体も増えるので、結果としてベーキングパウダーだけよりも炭酸ガスの発生量が増えることになります。なので重曹を加えると膨らむ力が強くなったんですね。
・・・・・・ただ、重曹を多く加えすぎると反応する酸性剤が消費されて足りなくなってしまい、炭酸水素ナトリウムあるいは炭酸ナトリウムが残ることになるので、焼き上がったときにこれらの苦味が現れてしまいます。
普通、ここまで考えて料理することはないです(笑。
【2026年3月加筆】
[Updated Mar 2026]
料理はやっぱり化学です
――そして化学は「加減」を教えてくれる
「料理は化学です」と言われると、
ビーカーや数式、白衣を思い浮かべて身構えてしまう人もいるかもしれません。
でも実際のところ、私たちは毎日の台所で、
知らず知らずのうちに化学反応を使いこなしています。
マフィンがふくらむのも、パンが焼けるのも、
肉がやわらかくなるのも、焦げ目が香ばしいのも、
すべては温度・水分・酸とアルカリ・時間が折り合った結果です。
元記事で紹介されていた
「ベーキングパウダー+少量の重曹で、同じ材料なのにふんわりした」
という体験は、まさに料理が化学であることを
体感で理解できる瞬間だったと思います。
ここから先は、その「体感」を
失敗しにくい知識と2026年の台所事情につなげていきます。
1. ベーキングパウダーは「完成された化学装置」
2026年現在、市販されているベーキングパウダーの多くは
いわゆるダブルアクションタイプです。
これは、
- 水分が加わったとき
- 加熱されたとき
の 2回に分けて炭酸ガスを発生するよう設計されています。
元記事で挙げられていた反応式①②③は、
まさにその「二段構え」を説明するものです。
重要なのはここで、
ベーキングパウダーは
「いい感じにふくらむよう、最初からバランス設計された混合物」
だという点です。
つまり、
何も考えずに使っても、だいたい成功する
というのが最大のメリット。
だからレシピ本や製菓教室では、
まず「ベーキングパウダーだけで作りましょう」と言われるのです。
2. それでも重曹を足したくなる理由
それでも今回のように、
- 生地をあえて詰まらせたい
- 油脂や糖分を多くしたい
- 酸味のある素材(ヨーグルト、ココア、柑橘など)を使いたい
という条件が重なると、
ベーキングパウダーだけでは
「力不足」に感じることがあります。
ここで重曹(炭酸水素ナトリウム)が登場します。
重曹は、
- 単体ではアルカリ性
- 酸と出会うと一気に反応する
- 反応が速く、力が強い
というピーキーな性格を持っています。
ベーキングパウダーに少量の重曹を足すと、
- 酸性剤との反応が促進される
- 加熱分解による炭酸ガス発生が増える
結果として、
「ふんわり感」が一段階引き上がる。
元記事のマフィンが成功した理由は、
まさにここです。
3. ただし重曹は「入れすぎると必ずバレる」
ここが一番大事なポイントです。
重曹は絶対に入れすぎてはいけない。
なぜなら、
- 反応しきれなかった炭酸水素ナトリウム
- あるいは生成された炭酸ナトリウム
が残ると、
苦味・えぐみ・石鹸のような後味として確実に現れるから。
2026年現在でも、
家庭のお菓子作り失敗談の上位は、
- 「レシピ通りなのに苦い」
- 「ふくらんだけど美味しくない」
というものが圧倒的です。
そして原因の多くは、
重曹を「ふくらむ粉」だと思って足しすぎた
これに尽きます。
化学的に言えば、
酸性剤が足りなくなった状態です。
料理的に言えば、
誰が食べても分かる失敗です。
4. 2026年の視点:pHと「味」の関係がより重要に
ここ数年で、家庭料理・製菓の世界でも
「pH(酸性・中性・アルカリ性)」という考え方が
少しずつ広まってきました。
理由はシンプルで、
- グルテンフリー
- 砂糖控えめ
- 植物性素材中心
といったレシピが増え、
従来の“ふくらみの前提条件”が崩れてきたからです。
小麦粉・砂糖・バターが揃っていれば、
多少雑でもうまくいった時代は終わりつつあります。
その代わりに、
- 酸味をどう入れるか
- アルカリをどこで中和するか
- 発生したガスをどう保持するか
という部分が、
以前よりもはっきり味に出るようになっています。
つまり、
「料理は化学」という言葉は、
2026年には昔よりも現実的な意味を持っているのです。
5. 難しい化学式より、覚えておくと便利な感覚
ここまで読むと、
「やっぱり難しい…」と思うかもしれません。
でも覚えるべきことは、実はこれだけです。
- ベーキングパウダー=安全・安定
- 重曹=強力だが癖がある
- 酸があるなら重曹は使える
- 重曹は必ず「少量」
これだけで、
元記事で語られていた現象は
ほぼ説明できます。
あとは実際に作ってみて、
「今日は膨らみすぎたな」
「ちょっと詰まりすぎだな」
その感覚を覚えることが、
一番の近道です。
まとめ:
化学反応は正直、だから料理は面白い
化学反応は嘘をつきません。
- 入れたものは反応する
- 足りなければ足りないなりの結果になる
- 入れすぎれば、必ず余る
だからこそ料理は、
- 感覚だけでも
- 理論だけでも
- 成功しない
そのちょうど中間で、
ようやく「美味しい」にたどり着きます。
元記事にあったこの一文は、
実はとても重要です。
普通、ここまで考えて料理することはないです(笑。
その通りです。
でも、考えたことがある人は、
次に失敗したときに、
「なぜ失敗したか」をちゃんと説明できます。
それだけで、料理は一段楽しくなります。
料理は化学。
でも、楽しむために知ればいい。
それくらいの距離感が、
2026年の台所にはちょうどいいのかもしれません。


