アルバム「Kiss of Life」に収録されているタイトル曲はバラードです。
ミディアムテンポと言っても良いかもしれません。自然と歩き出してしまえるスピード感覚なので。
作詞 有木林子 作曲 編曲 崎谷健次郎
album 「Kiss of Life」 1989.4.
アルバム「Kiss of Life」が、1980年代半ば頃から盛り上がっていたハウス系ダンスミュージックの色合いが濃いですが、収録されている楽曲はバラードもミディアムテンポもあります。当然と言えば当然ですし、アルバムに多用な要素が反映されるのは自然なことです。ですが、1989年にリリースされた当時の私にはアルバムを通して聴いていてもずっとビートに包まれている感覚がありました。ずっと踊っていられる、そんな高揚感です。アップテンポとバラード、その緩急のメリハリがバッチリ効いていて飽きません。
アルバムタイトル曲はバラードで、アコースティックギターの音色が美しいのが強烈な印象でした。ギターそのものの音色というよりコーラスとの混ざり具合が、大気中に何かを放出しているようで心地良いです。マイナスイオン的な何かに感じていたのかもしれません。深くリラックスできます。でも、しっかり起きていられる、深い感覚です。
曲が素晴らしいのは当然ですが、さらに「音」「音色」そのものの美しさが際立っていました。
その音が聞こえるだけで、耳からの幸福感というのでしょう。心地良くて、まわりの景色が違って見えてきました。
1989年当時、音楽はウォークマンで聴いていました。友人や先輩の車に乗せてもらったときにカーステレオで聴くこともありましたが、基本はウォークマンで聴きながら歩いています。そんな時代感覚というか、自分のライフスタイルと密接だった音楽です。
2021年現在、歩きながら音楽を聴くことはありません。スマホで聴くことも可能ですが、むしろ風の音や街の音だけで過ごしています。けれども、ときおり、脳内で再生されるわけです。春の心地良い陽射しの中で、脳内再生される「Kiss of Life」のイントロ。
たくさん聴いて、もしかすると自分自身の脳内ではオリジナルの音色やアレンジに変化してしまっているかもしれません。CDだけではなく、ライブで聴いた別のアレンジも加味されて、いい感じで脳内ミックスされるからです。そう考えると、自分が一番好きなバージョンは、自分の中にしかないのかもしれません。
written by 水瀬次郎